閑話 大会決勝
ここで時系列は少し戻り平成19年7月の終わり頃。中国との戦争が始まってどうなるかと思われた沙羅達の少年野球の大会は、こんな時だからといって頑張ってきた子供達の楽しみを奪ってはいかんだろう、それに敵も東京空襲は容易ではないという判断で予定通り行われていた。
そして沙羅達のチームは怒涛の勢いでついに決勝戦まで登り詰めた。
東京府 後楽園野球場公園第3グラウンド
「相手は台湾代表・・・・・・身体能力的にもタフな手強いチームだけど、これまで言ってきたごつ、最後までなんさま楽しんで行こう!」
『おー!!!』
キャプテンの沙羅が声を出し、皆、気合を入れ、ベンチに戻り、準備をしながらスタンドを見渡す。
(パパもママも千寿も皆見てくれてる・・・・・・博さんにも見て欲しかったけど、しょんにゃ、パパがビデオ撮ってくれるやろうし・・・・・・何にせよ不甲斐ない結果にせんようにせんと)
客席の家族達から目線を切り顔をパンパンと叩く沙羅。
そんな彼女の左肩を重い防具をつけた俊弥がぽんぽんと叩き、微笑む。
「沙羅、こっちの練習の時間だよ」
「落ち着いとんね、あんたは」
「泣いても笑っても今日で最後だし、どうせなら笑って終わりたいども、相手だってそう思っとるよ」
「ふふ、そうね・・・それにここは私が作った球場とも言えるし・・・・・・」
「?」
「んん、なんでもない、ほら、いこ」
沙羅がエリザベスの時に日本政府と協議した中に日本野球界の盛り上げに関する提案もあり、後楽園ボールパーク構想が実現したのだが、そんな事知るはずもない俊弥は、一体彼女は何を言ってんのかと思いながらとりあえずマスクを被り、沙羅のボールを受ける。
「軽く行くよー」ヒョイ
パシッ
「おーけーおーけー(軽くでこれか・・・これはもしかしたら本当に・・・・・・)」
改めて沙羅の身体能力を痛感すると同時に、本当に頂点へイケるかもとワクワクする俊弥。
両チーム試合前練習を終え、沙羅達のチームは先攻となるので、一旦ベンチに戻り、相手が守備に付いてから先頭バッターが打席に向かう。
「おねがいします!」
すぐに球審がプレイの宣告をかけ、試合が始まる。
初回は1.2番が連続内野ゴロでツーアウト、3番沙羅が内野安打で出塁するも、続く4番俊弥は初球を打ち上げ捕邪飛、スリーアウト。すぐに初回の守りにつく沙羅達。まず立ち上がりを三者凡退に抑えると、その後は相手エースの陳とともに気迫のピッチングやバックの好プレー等で、両チームともに0を並べていく。
そして延長9回表・・・・・・
「ふぅ・・・・・・」
初回から飛ばしていた影響か、肩で息をしながら汗をダラダラと流す沙羅にチームメイト達が声をかける。
「沙羅、あんた飛ばしすぎよ、沙羅なら7.8割のピッチングでもそうそう打たれんてから」
「美輝・・・・・・」
「そうだよ、もしきつかったらこの裏から俺が投げるよ、絶対抑えてやるけん」
「ノブさん・・・・・・」
「その前に勝ち星は貰おうか」
「俊弥・・・・・・え?」
俊弥にバットを渡されふと顔をあげると、いつの間にかワンナウト満塁になっており、打順は沙羅まで回ってきていた。
塁上の選手達やベンチの皆も、このチャンスは沙羅に決めて欲しいと発破をかける。
「・・・・・・よし、勝ち星も勝利打点も私のもんじゃああああ!!!」
興奮からか、疲れも痛みも忘れ、打席へ立つ沙羅。
(陳の球は確かに厄介・・・・・・でも、決定的な弱点がある!それは・・・・・・)
ガキン
(制球が良すぎる事よ!)
沙羅の打ったインハイのボールは内野と外野の頭を遥かに超え、先制、そしてとどめの満塁ホームランとなり、相手バッテリー、野手、ベンチが肩を落とす中、味方ベンチは大いに盛り上がる。
その後も追加点を上げて9回の裏、結局最後まで沙羅がマウンドに立ち、彼女達のチームは日本一を勝ち取ったのであった。
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