発足



 平成18年 秋



 沙羅は秋休み前の終業式を終えると、直ちにある場所を訪れた。

 沙羅達の通う小学校から徒歩数分、そこは約70年前、エリザベスと博文が訪れた場所でもあり、今度も沙羅は人と一緒にここへ来ていた。




「村松さん、久しぶりね」



 その人物とは、以前沙羅の元へ現れた村松、沙羅と同じ転生者である。

 あの後、2人は何度かここで会っており、キャッチボールをしながら前世の話や他愛もない世間話をする仲になっていた。



「彼氏に内緒で俺に会ってていいのか?」



「だってあの子達に前世の話とかしたってねえ・・・・・・それに、貴方みたいなおっさんとどうもならんでしょ」



「沙羅ちゃんははっきり言いすぎだよ・・・・・・って中身の年齢変わらんだろう」



 まだ30代前半なのに小学生からしたらおっさんか・・・・・・と肩を落とす村松だが、沙羅も中身は変わらんだろうとつっこみ返す。



「ちょ、それは言わない約束でしょ」



「ははは」



「むぅ・・・それで村松さん、最近はどう?」



「どうって言われてもなあ」



「仕事とか、恋愛とか・・・・・・この世界には慣れた?」



「だいぶね。君の曾お祖父さんが紹介してくれた軍属の仕事もまあそれなりにやってるし、恋愛についてはノーコメントだけど」



「ふふふ、前世の因果を感じるような人とかいないの?」



「そんな都合のいい話あるわけないだろ、沙羅ちゃんと曾お祖父さんは奇跡だよ」



「そっかー、そうだよね。ほんと、奇跡だんね・・・・・・ねぇ、私達の他に転生者っていると思う?」



 沙羅はエリザベスとして、東京で会った杉下の事を思い出していた。

 あの時代でも、そしてこの時代でも1人ずつ転生者に巡り会ったと言う事は、他にもこの世界に転生している人物は絶対居るはずと確信を持っていた。



「そりゃ、居る。でも、こんな事公に言えんだろう、俺だって君と君の家族にしか話してないんだからな。探すのも困難だよ」




「そっかー・・・・・・あれなら転生者の会みたいなの作ろうと思ったんやけどなあ」



「それに、見つかったとして、誰がどこから転生してきたかも分からんし、それこそスターリンやヒトラーが転生してたらどうするよ」



「極論じゃん」



「可能性はZEROじゃない」



「なんで0を発音良く言うのよ」



「ってか、転生者の会なんて作って何すんの?」



「まあそれぞれ前世ではこんな事してましたーとか、転生何回目ですかーとか話し合ったり?」



 しどろもどろになる沙羅に呆れ顔の村松。詰まるところ、沙羅は特に深く考えてはおらず、ただ転生者を集めて楽しく話したりしたいだけなのである。

 ひとまず、この日より沙羅と村松2人で転生者の会が一応発足、沙羅は博文を頼り、秘密裡に会員集めを始める事となった。













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