不審者事案
平成17年 5月
沙羅の誕生日の少し後、彼女達の通う小学校の保護者達に教員達から気になる連絡が回ってきた。
「沙羅、あんた変な人見かけた?」
「んね(いや)」
「そう・・・うちの子は遭遇してないそうです、はい、そうですか・・・では・・・」
電話を切って、沙羅に向き直る母の瑠美。やっと名前が付いた。
「また不審者でも出たん?」
「あんたは冷静すぎたい」
「だってママ、どこの世界いつの時代もそういう人っておるやん」
「ばってん気付けとかんと」
「いざとなれば防犯ブザーあるし、トシちゃんも忍者もおるし」
博文は沙羅の身を案じ、忍者部隊を沙羅達の住む家の周辺地域に配置していた。
親としてはそれでも心配な面はあったものの、今回の不審者問題に関しては意外にも早く解決する事となる。
一週間後
沙羅は遂に件の不審者と遭遇。防犯ブザーに手を掛けると、その人物は走って逃げようとしたが、すぐそこの壁に隠れていた忍者によってすぐ取り押さえられた。
「最近話題の不審者って貴方よね?」
忍者にもういいと命じて、どう考えてもただの小学生とは思えない落ち着いた口調で尋問をスタートする沙羅。
「貴方、いわゆる小児性愛者ってやつ?」
「ち、違う!」
「でも小学校の通学路で怪しい動きしてるとか、そうとしか思えんよ」
「・・・・・・」
「あら、本当に違うんね。もしかして、私の事知ってる?」
「前にテレビで天才児で紹介されて・・・・・・」
「そうじゃなくて・・・・・・質問変えるね、元合衆国大統領エリザベスが私だって知ってる?」
「なに?!」
「それは流石に知らんか・・・・・・私が転生者だって事は分かってるのよね?」
「あぁ・・・・・・」
「それで最近この世界に来て、転生者の私に会って話を聞きたかった、違う?」
「そうだ、前世で死んだ後、変な神に会って適当にやってくれと言ったらこの世界に・・・・・・」
「(霊魂管理局って変な神しかおらんの?)それにしても、そぎゃん不審者で通報されるような事とかせんだっちゃよかろて」
「何とか早く君に会いたかったんだ」
「結構おおごつ(大変な事)なりかけとっとだけんね、それで名前は?名乗らんとほんなこて不審者って事にするばってん?」
「なっ・・・・・・村松 資仁だ」
男の名乗ったその名に思わず、心の中でツッコミを入れ、肩を震わせる野球少女沙羅。
「で、いg・・・村松さん、今回の件は私の方から教師達にも説明しておきますから、今度また改めて話しましょう」
一人ツボにはまりながら、村松に小さな地図を渡す沙羅。
「ここに行けばいいのか」
「そう、私も転生者に会うのはこっちの人生じゃ初めてだし、色々話したいもん」
「・・・・・・ありがとう」
この後すぐ、沙羅は学校に転生の話は告げずに、不審者の件は単なる見間違いじゃなかったかと報告し、学校側も過敏になりすぎたのではないかという事で一連の事態は収拾したのであった。
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