誕生日
平成17年 5月8日
沙羅は9歳の誕生日を迎え、沙羅と両親の住む自宅に彼氏の俊弥や親友の実咲らを呼んで、誕生日パーティが行われていた。
この世界の沙羅の両親も少し経済面は困窮してはいたが、最近は日本全体で景気が上向き、どこの家も少し余裕が出てきており、このパーティの料理やケーキ等も準備する事ができた。
電気を消して、皆でハッピーバースデーを歌い、沙羅が9本のロウソクを消すと、明かりをつけてクラッカーを鳴らす。
「沙羅ちゃん、おめでと〜!!」
「わーい、祝え祝えー!」
一人っ子である沙羅は家族以外に彼氏や友達にも盛大に誕生日を祝って貰い、御満悦の様子である。
両親としても、友達の前で子供らしい顔を見せる沙羅を微笑ましく見つめる。
「そうだ俊弥くん、うちの子は一人っ子だけんわがままな時もあるけど、いつも迷惑かけてない?」
沙羅の父は、まだ小学生の娘に彼氏が出来たと聞いて最初は戸惑ったものの、相手が俊弥と分かって安心し、逆に彼の方を心配していた。
「いえ、大丈夫ですよ。僕の方が沙羅ちゃんには助けて貰ってばかりで・・・・・・」
「いい子だね、俊弥くんは」
「もう、パパ!」
「ごめんごめん、実咲ちゃんもいつも沙羅と遊んでくれてありがとね」
「いえいえ、沙羅ちゃんすっごい優しくていっつも守ってもらって・・・・・・」
「へー」
「子供には子供の話があるんだけんパパとママはあっち行ってて!」
「はいはい」
沙羅に怒られ、夫婦で部屋へ行く二人。
沙羅と実咲、俊弥の三人は親には聞かれたくない話をし出す。
「ねぇねぇみーちゃん、春野さんとはその後どうなったん?トシちゃんも気になるよね?」
「僕は別に・・・・・・あ、はい」
「んー、実はこの前ね・・・・・・」
少し前、中学生になったばかりの春野と二人で遊びに出かけた実咲。
実咲はデート気分でルンルンだったものの・・・・・・
「通りすがりのおばちゃんに妹さん?て言われて、あの人もはっきり否定せんくて・・・・・・私、春野さんに妹くらいにしか思われてないんかなって」
「あー、そのくらいの男子って難しい年頃よね・・・・・・」
「沙羅ちゃん、まだ9歳だよね?」
「・・・・・・って、隣のまみ姉が言ってたよ!(あぶね、いくら近しいと言ってもこの子達に前世の話とかできんもんなあ)」
「そっかぁ・・・・・・恥ずかしがっとうだけ?」
「そ、そうよ!ね、トシちゃん!」
「え?あ、うん。実咲ちゃん大丈夫だよ(全然分からん)」
「そ、そうだよね!気にする事ないもんね!それじゃあ今度は二人の話、聞いちゃおっかなー」
表情も明るくなり、お返しとばかりに沙羅と俊弥の事を聞き出そうとする実咲。
「え、私達は別に・・・ね?」
「別にそんな面白いことないよ?」
あからさまにテンパる沙羅と俊弥を実咲はニヤニヤと見つめる。
「もうちゅーしたの?」
「そ、そりゃあね、ちゅーくらいいっつも・・・・・・」
「沙羅ちゃん、赤くなってる〜」
「みーちゃん、やめてよ〜」
普段はあまり見せない沙羅の乙女の表情が珍しく、実咲も聞いておいて恥ずかしくなってくる。
そして、俊弥も実咲も帰った後、沙羅は母親から話があると告げられる。
「それって、ママのお腹の中ん子の事?」
最近の両親の様子や自身の勘から、大体の検討を付けていた沙羅は、つい先走って口を滑らせる。
「沙羅、分かっとったん?!」
「うん、ママとパパの最近の様子からなんとなくね。私もお姉ちゃんになるのは嬉しいけど、ママ、お仕事は大丈夫?」
「沙羅が心配する事じゃなかよ」
「でも・・・・・・」
「大丈夫、沙羅ももうお姉ちゃんとしてしっかりできるもんね」
「うん!」
「この子の性別ね、今度分かるけど、沙羅は弟か妹どっちがいい?」
「んー、弟がいいなあ」
「そっかぁ、じゃあ男の子だったらいいね」
その後、お腹の中の子は当初女の子と診断されたものの、最終的に男の子だと判り、沙羅はまた大喜びであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます