少女達の夢
平成16年 初夏
小学校2年生になった沙羅は学校で勉強して、放課後や日曜日には実咲と遊んだり、俊弥らと野球したりと、日常を謳歌していた。
「今度の人生超楽しいな」
「沙羅ちゃん?」
思わず零れた沙羅の言葉に実咲が変な顔をする。
「あ、いや、なんでもないよ。それよりみーちゃん、今度の将来の夢の作文できた?」
「うん。沙羅ちゃんは?」
「私もできたよ。でも、最近なりたいものがまた増えたような気がして」
「沙羅ちゃんは災害とっきゅーになりたいんじゃないの?」
「そうだけどね······野球も好きだし、みーちゃんのパパみたいに軍人さんもやっぱり······」
「そうなんだぁ、でもいいなあ沙羅ちゃん。そんなにいっぱい夢持てて」
「そう?」
「うん。私はパパみたいな海軍の軍人さんになりたいってしか思ってこなかったし」
「みーちゃんこそすごいよ。男の子でも軍人さん、しかも海軍に入りたいって子、中々おらんよ」
女性の軍人も中には居るとはいえ、いつからか徴兵も無くなり、男の子でも陸海空どれかとかでもなく、軍隊に入るという事すら忌避するようになったこの時代において、三軍の中でも一番厳しいと言われる海軍、それも伝統の江田島海軍兵学校に入りたいという実咲に、沙羅は畏敬の念を抱く。
「えへへ、今は平和な時代で、パパも白い目で見られるからって軍服で出歩く事はないけど、それでいいってパパ言ってた。そして、私達が大きくなっても、そんな時代であって欲しいって、軍人は戦争する為、人を殺す為に居るんじゃない、ただ国民を、家族を守る為に居るんだって······」
「そっか······みーちゃんのパパはかっこいいね」
「うん!だけん、私もパパみたいな軍人さんになりたいの!沙羅ちゃんみたいに運動神経はないけど、私がんばる!」
「うん!みーちゃんなら絶対なれるよ!」
「沙羅ちゃん、ありがとう」
この日、語り合った少女達の夢は二人を強く結びつけるものとなった。
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