小さくても女は女



 平成15年 夏



 遊びたい一心で夏休み開始当初に宿題を済ませ、存分に休みを謳歌する沙羅。

 この日は学校でできた友人、実咲と遊ぶ予定を入れていた。ちなみに沙羅は両親共働きで、以前は祖父母らに預けられていたが、小学校に上がったのを機に合鍵を持たされている。



「沙羅ちゃん、パパもママもおらんのに、おうちおらんでいいと?」



「いいよ。おうちばっかりだと、飽きるもん」



 沙羅はこの世界で再び転生した後、かなり活発な子に育っていた。

 両親も一人娘とはいえ、家でゲームやテレビばっかりよりは······と、沙羅には出来るだけ外で友達と遊びなさいと教育していた。



「はは、確かにね」



「じゃあ、いつもの公園行こう」



「うん」



 補助輪取り立ての自転車で公園へと向かう二人。




 数分後 なんやかんやあって考え込む人の像がある公園




「うわ、沙羅ちゃん、男子でいっぱいね」



「そうだね······」



 既に公園は男子達でいっぱい。前世でも男の子と混じってやんちゃに遊ぶ事もあった沙羅はそれでも構わないが、実咲は嫌がっていた。



「みーちゃん、やっぱり他のとこ行こっか」



「うん」



 そう言って自転車を走らせる沙羅に実咲がついていく。



「全く何も考えてない人の像の公園なら、いつも空いてるよ」



「あ、そうだね。でも沙羅ちゃん、ちょっと遠いよ?」



「まだ1時だし大丈夫よ」



「う、うん······」



 更に数分後 全く何も考えてない人の像がある公園



「誰もおらんね、沙羅ちゃん」



「ここは穴場だもん」



 実際、ここは通りから少し外れた高台にあり、子供の目線では見つけにくかった。

 ままごとや砂遊びと一通り遊んだ後、二人はブランコに乗りながら話し込む。



「ねえ、沙羅ちゃんは好きな男子とかおる?」



「おらんよ、同い年の子は子供みたいだしにゃーにゃー(ないない)」



「私達も子供たい?でもなんか分かるな」



「だよねー、てかなんでそんな事聞くと?あ、まさかみーちゃん······」



「う、うん······」



「えー!誰?誰ね?!クラスの子?!」



 この日1番にテンションを上げてくる沙羅に若干戸惑いつつ、実咲は答える。



「ち、違うよぅ、同じクラスじゃなくて、上級生の人つたい······誰にも言わんでよ?サッカー部の人で、足も速くて、お勉強もできて、顔もかっこよくて······」



「何その完璧なやつ······(TL小説だったっけこれ?まだティーンじゃないけど)」



「でも、彼女さんいるみたいなんだ」



「あー······」



(最近のガキませてんなー)等と自分も最近のガキである事を自覚しない沙羅。しかし、友人の恋路は応援したかった。



「みーちゃん、彼女がおらすけんって諦めちゃダメよ。どうせ今付き合っとってもさ、いずれ別れる確率のが高いんだけん、子供の恋愛なんてそんなもんよ?」



「沙羅ちゃん、なんかママ達みたいな事言うね」



「あ······」(っべー、中身ババアってバレるわ)



「ふふ、でも沙羅ちゃんがそう言ってくれてよかった。諦めんでいいんだよね」



「う、うん、そうだよ!みーちゃん私なんかより全然可愛いし、チャンスあるよ!」



「ありがとう、沙羅ちゃん」



 実咲は自信がついたようだが、沙羅の発言は完全なるハッタリである。

 大人なら5歳差など微々たるものだが、沙羅達の歳では全然違う。小学校高学年の子が1年生の子を好きになってくれる等滅多にない事は沙羅には分かりきっていた。

 しかし、ハッタリでも実咲を勇気づける事は出来たのでよしとして、この日は帰宅していった。


















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