長門



 平成13年 夏


 なんとなく自宅でテレビを見ていた沙羅は、どうも見覚えのあるものを目にする。



「長門!!保存されてたのね・・・・・・」



 瀬戸内海、呉軍港の片隅に鎮座する戦艦長門。米海軍メリーランドと共にツービッグとして親しまれ、第二次欧州大戦ではフランス上陸作戦等で活躍した巨艦であるが、沙羅も大戦後の彼女達の事はよく分かっていなかった。



「へー、あの後何回か退役したり、時局で改造して復帰したり・・・前世のミズーリみたいね」



「てか結局この世界じゃ大和型もアイオワ級も産まれなかったのね」



 太平洋戦線、真珠湾攻撃もマレー沖海戦もなかったこの世界でも、航空機の性能向上や、大戦中に大西洋や北海で航行中のドイツ艦の多くが航空攻撃で沈み、これによって三大海軍国である日英米内でも、航空主兵主義が多数を占める事となった。しかし日本海軍が戦前から密かに巨大戦艦を作って、彼女が東京移住した頃には二番艦まで就役していた事は沙羅の情報網を持ってしても全く把握できていなかった。


「アイオワに関しては似たような話を止めた覚えはあるけど・・・・・・てか、また歴史調べてみたけど、ロシアはいつの間にか共和制になってるし、ガチで日本とアメリカで覇権握ってるのね」



 前世、世界の警察と称されたアメリカ合衆国。この世界ではそこに日本も抱き合わせとなっていた。

 大日本帝国は帝国という名前こそ捨てたが、アメリカと合わせパクスジャメリカーナとも言われる世界構造が出来ていた。



「元は私が思い描いたもんだけど、やっぱすげえなあ」



 ぽつり呟いていると、母親が不思議そうな顔で沙羅の顔を見る。



「沙羅、外地行きたいの?」



「え?う、ううん。私は内地がすきだもん」



「そう?今、南洋旅行の番組見てたから・・・」



「でもさら、ひこーきこわいし」(国内と言っても、そんな外地に旅行する余裕はないもんね)



「そう。じゃあどっか行きたいとこない?今度ね、パパもママもお休みの時どこか出かけようか」



「やった!さらね、さらね、きくちのみずのえきいきたい!」



「あら、動物園とか遊園地じゃなくていいの?」



「うん!さらね、お魚さんすきだん!」



「ふふ、分かった」




 というわけで、今度の両親の休みが重なる菊池水の駅に連れて行って貰える事になった沙羅であった。

















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