天才児沙羅ちゃん



 平成13年 春



 幼稚園年中になった沙羅は、地元テレビ局の取材を受ける事となった。

 で、一体なぜ沙羅が取材を受ける事となったかと言えば、沙羅の時折見せる幼児らしからぬ言動や思考能力の高さを見出した幼稚園の教諭が、普段の彼女の様子を動画に収め、テレビ局へそのテープを送っていたのである。



「いのーさらです!もうすぐごさいです!」(この世界でも数え年は主流でなくなっている)



「元気いっぱいな自己紹介ありがとう。じゃあ、色々沙羅ちゃんに聞いていくけど、大丈夫かな?」



「はい!」



 テレビカメラの前でも億さず、ハキハキと喋る沙羅。

 幼稚園は楽しいか、好きな食べ物は、好きな子はいるか等と無難な質問が続き、次は問題を出すから答えてくれと言われ、やっと本領発揮出来ると意気込む沙羅。



「今の日本の首相は誰でしょう?」



「林さん!」



「正解!」



 その後も道府県の数や、有名な事件や人物に関する問題、簡単な算数の問題等が続く。無論、沙羅は全問正解中である。



「沙羅ちゃん、凄かね!」



「えへへー」



「じゃあ最後に、これはまた質問なんだけど、沙羅ちゃんは大きくなったら何になりたいですか?」



「うーん、さらねー、さいがいとっきゅー?にはいりたいです!」



 沙羅の言うさいがいとっきゅー、正式には災害特別救助隊とは、この世界の大日本帝国が第二次欧州大戦後にエリザベスからの情報を元に組織した、警察や消防や軍の救難隊とは別の、災害対応に特化した防災省という組織の下部組織である。



「特救?なんで?」



「だってねー、さらねー、だれかをたすけるおしごとがしたいの」



「そうなんだね、なれるといいね」


 微笑むリポーターに沙羅も笑顔で答える。


「うん!」




 この日の沙羅への取材は数日後放送され、孫夫婦の家でそれを見た博文は、必死に女児の口調やしぐさをつくろう沙羅にずっと笑いを堪えていたという。














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