第3話 捜索

 あくる日、私は祖父の部屋へと向かった。本当に政治関連の記者だったのか、確かめるためだ。別に祖父を信用してないわけではない。ただ、過去の祖父を話ではなく、感覚で感じてみたいと思ったのだ。


 ちなみに、過去の祖父を知る祖母に話を聞いてみた。祖父が亡くなって間もなく、萎れた祖母に聞くのは申し訳ないとは思ったが、あえてその優しさは押し殺した。

「アタシには仕事のことなんて一切話さなかったけどネ・・・ そうネ・・・ 今でこそ家に居座るようになったけど、昔はあちこちに出向いていたネ」

 祖母は遠くを見ながら、どこか楽しそうに教えてくれた。


 いざ、祖父の部屋へと入ってみる。目についたのは服。服なんか 興味ないと思っていた私だが、いささかそれは誤りだった。数はそれほどないが、今でも売れている名ブランドのジャケットやら靴やらがきれいに並んでいる。

 いつの頃か、この部屋に入ったことがある。しかし、その時にはただ寝具が置かれているだけの不愛想な部屋だった。それがどうしたことだろう。60前後のモデル気取りのおっさんの部屋が、そこにはあった。

 この部屋に圧倒されながらも、ひとつひとつ手掛かりになりそうなものを探していく。タンス、デスクの引き出しに、ベッドの下まで見て回った。


 二時間は探したはずだ。だが一向に見つからない。祖母には部屋の片付けと言っているが、こうも長いと何事かと怪しまれるため、引き上げることにした。

 そんな帰り際、例のジャケットたちの中に一つだけ汚れているものがあることに気が付いた。汚れというよりも、年季があって色あせている一際目立つジャケットだ。なぜさっき気付かなかったんだろうという疑問は無視して、そのジャケットをあさってみる。


 内ポケットには、手帳が二冊入っていた。

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