第10話

 ある猫がとある家に仕え始めたころ。

 就職したばかりなので、街外れの草庵いおりに住んでいて、その家がせまく、ヤリを立てかける場所すらない。

 そこで、竹の節をぬいて、その中にヤリを入れ、野外に立てかけていた。

 ある時、主人が犬っぽいイキモノと散策に出かけたが、犬っぽいイキモノはその竹に反応した。

 変な場所に竹がのをフシギに思った主人は、主人のおでましを平伏する猫に

「この竹はなんにゃ」

と、尋ねる。

 猫は

「かくかくしかじかでありますにゃ」

と、理由を答えた。

 主人は

「良い心がけにゃ」

と、褒めたという。




 夏緒の父は彼女にこの種のハナシをして

「わたしたちがこうして読書にはげむのも、いざという時のためなんだよ」

と、言った。

「うん、わかった」

  夏緒は楽しそうに笑いながらそう返すのが常だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る