第9話

 今まで夏緒の名字について書いてなかったことを

 夏緒の名字はてんきょういんというもので、世界に名だたる家名である。が、彼女の父はいわゆる分家、しかもかなり末流で、名前に似つかわしくない慎ましい暮らしであったという。

 彼女は母親を早くに亡くしていて、父親と彼らに仕えるフッドマンやメイド(父親が不在の時が多かったために、少ない収入で雇った)という家庭であったらしい。

「まあ、本を読む分には困らなかったな」

とは、夏緒本人談。

 

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