第146話 異常て……

聖皇国であったことをリンディエールは得意げに話していた。


これを、ヒストリア以外が口をポカンと開けて聞いていた。ヒストリアは早い段階から、首を時折横に振りながら片手で顔を覆っている。だが、リンディエールは気にしない。


「いやあ〜。けど、めちゃくちゃ臭いんよっ。消臭の薬をガンガン使ったわ〜」

《……どれだけ使ったんだ?》


リンディエールが『ガンガン』と言うほどというのに、ヒストリアは不安になったため、確認せずにはいられなかった。


「ん? ん〜……二百?」

「「「「「にっ!?」」」」」

《おいっ。リンが作れる消臭薬はただの消臭薬じゃないだろ!? 消臭浄化薬だよな!? ゾンビ系なら、消臭だけじゃ無理だろ!?》

「せやで?」


こてんと頭を倒してそうだけどと答えるリンディエール。


《ランクは!?》

「特級やよ? ヒーちゃんが教えてくれたやつやん」

《おまえっ〜……その材料……どうしたんだ……っ》

「深海の迷宮を周回したで?」

《あそこはっ、特級の解毒薬がないとダメだろ!》

「っ……せやなあ……」


ここに来て、ようやくリンディエールは、まずいと思いはじめていた。


「あ……あはは……いやあ〜……」

《……リン……》


ヒストリアの低い声に、目を泳がせるリンディエール。


《……夜に行ったんじゃないよな?》

「え〜っと……えへへ?」

《っ、夜はフビル貝が多くなるがっ、その分毒性も高くなるんだぞ!》

「……だって〜……夜のが出現率倍やん? お得やん? って……お、思ったかな〜って……」

《……》


これは相当怒っている。


《……グラン……》

「はい」

《しばらくリンの外出は禁止だ。転移もなし》

「承知しました。リン様。こちらを失礼します」

「へ?」


グランギリアが腕輪をどこからともなく出し、それをリンディエールの右腕に嵌めた。


「……なんやコレ……」

「転移門は固定されていますので、お使いいただけますが、新たに開くことと、個人で転移することが出来ないよう、魔力を抑えるものです。管理はリア様がなさいます」

「……こんなん知らんねやけど?」


見たことないなとリンディエールは怒られていたことも忘れて調べる。


「……【魔力制御➖子➖】? 子?」

「リア様が付けておられるのが『親』です。本来、これは魔力の制御を覚える前の魔族の子ども達の魔力を、親が管理し、監督するためのものです」

「へえ〜……ん? 管理、監督?」

「はい。全く使えなくもできますよ?」

「へ!?」

《しばらくは薬を作るのも禁止だ》


リンディエールは顔色を変える。ヒストリアを見れば、指に嵌っているのがソレらしいことは確認出来た。


そして、まさかと嫌な予感がしてステータスを確認する。


「【ステータス】!」


ーーーーーーーーーーーーーーー

個称 ▷リンディエール・デリエスタ

 (ウィストラ国、デリエスタ辺境伯の長女)

年齢 ▷10

種族 ▷人族

称号 ▷ 家族に思い出してもらえた子ども、

     家族愛を知りはじめた子、

     使用人と祖父母達に愛される娘、

     密かな愛され系女子(?)、

     目覚め人、エセ関西人(爆笑)、

     神竜王(仮)の親友、

     異世界人の悪友、

     魔法バカ(特異)、

     ゴブリンキングを倒した者、

     辺境の小さな英雄、

     忠誠の誓いを受けし者(2)、

     レベリング馬鹿、

     兄に溺愛される者、

     年上キラー(!)、

    *迷宮の覇者(ちょっとおかしい)

     きらめき⭐︎あいどる、

     カレイに?怪盗?(笑)、

     剣聖(現役)

     神竜王(仮)の加護(特大)、

     神々の観劇対象(ニヤリ)

               【固定】、

     神々の加護(特大)、

     神々と繋がる者(任命!)

     


レベル ▷450

体力  ▷28463000/28463000

魔力 ▷10000

     /10000

(52960000

     /52950800)管理


魔力属性▷風(Max)、火(Max)、

     土(Max)、水(Max)、

     光(Max)、闇(Max)、

     無(Max)、時(Max)、

     空(Max)

ーーーーーーーーーーーーー


魔力の数字を見てリンディエールは声を上げる。


「ぎゃぁぁぁっ! 一万!? コレ! 一万しか使えんってことか!?」

《いいや》

「はっ……なんや……驚いたやん……こんなん赤ん坊みたいなもんやもんなあ」


ほっと胸を撫で下ろすリンディエール。だが、そんな甘くはない。


《全部使おうとするバカがあるかっ》

「……は?」

《当たり前だろ! まさか、お前……魔力を枯渇させたことないんじゃ……》

「枯渇?」

「リン様……魔力は残り10ほどになりますと、気絶いたします。体力もそうですが……リン様……?」


グランギリアまでそれはおかしいだろうという目でリンディエールを見る。


「あ〜……魔力はないなあ。体力は……アレやろ? めっさだるくなって眠くなるやつ」

「はい……」

「魔力はどうなるん?」

「……本当に経験がないと……?」

「やって……減るそばからレベル上がって、増えるんやもんよ」

「「「「「……」」」」」

《……》


誰もが絶句した。普通は、子どもの頃に一度や二度体験することになるものなのだから。


《そうだった……こいつのレベル上昇率は異常なんだった……》

「リア様……もっと前にこれは経験させませんと……」

《いや、だってなあ……異常すぎるんだから仕方ないだろ……》

「はあ……まあ、そうですね。リン様は異常です……」

「……異常て……」


異常、異常と言い過ぎではないかと、さすがのリンディエールも顔を顰めた。


《まあ、気をつけろ。この機会に体験してみるといい》

「ふ〜ん。まあ、気にしてみるけど」


そう言っていたリンディエールは、この日、魔力枯渇を体験した。


「いっ、痛っ、痛いっ、頭痛いぃぃぃ……うっ……」


魔力枯渇は、酷い頭痛に襲われるのだ。教えておいて欲しかったと涙ぐみながら気絶したリンディエールは、翌日、ヒストリアに真剣に謝ったのだった。









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読んでくださりありがとうございます◎

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