第101話 種類やろ?

三百年程前、この国が建国されてしばらくした頃。当時、国に忠誠を誓ったフレッツリー家、リシャーナ家、フリュース家の三家を『盟約の御三家』と呼んだ。


フレッツリー家は文官を。リシャーナ家は武官を。フリュース家は使用人を育成し、より良い国のために人材を確保するというのが、盟約の内容だ。


守れば国は富み繁栄し、破れば災いを呼ぶと言われていた。古い誓いによる呪いだった。


しかし、百年と少し前、リシャーナ家とフリュース家は一つになり、リフス家となった。この頃にも貴身病きしんびょうの影響が出ており、家の存続が危うくなったためだ。


なんとか盟約だけは守らねばならないと、考えて結果だった。


そう、守られているはずだったのだ。だが、その盟約、実はもうかなり揺らいでいるというのは、リンディエールが調べた結果分かっている。


「この盟約、三つの家というか、三者存在するのが大事やってん……だから、ここで一つ確実に分けよか思うてな」


修道院の中庭にあるベンチに腰掛け、リンディエールは、悠に説明する。これに、悠が昔の記憶を思い出すように確認した。


「クイント宰相の家がフレッツリー侯爵家だよね? で、リフスって、ガルセルスのリフス?」

「ん? ガル……なんやて?」

「ガルセルス。フィリクスお兄さんと同学年で、脳筋担当」

「脳き……ベンちゃんとこの次男か」


ゲームとして見るなら、確かに脳筋担当という認識でも仕方がない。


「あそこはなあ……どうなるんかなあ……」

「なに? 何か問題? 脳筋は、直感で正解を勝ち取るスーパー君だよ?」

「それ、ゲームの設定やん。あかんて、現実はそうご都合主義もあらへんよ」

「……そうだった……」


リンディエールはどうしてもベンディと比べるため、それが正解というわけではないだろうが、長男も次男も不安要素しか感じられなかった。


「悠ちゃんには、ベンちゃんを紹介しとらんかったなあ。それに……ラビたんをバカにしとった兄やで?」

「え……ら、ラビ先輩が弟……バカにしてたって……それ……最低! ラビ先輩は凄いんだよ!? 女の子の気持ちも、男の子の気持ちも分かってくれるし、面倒見も良いしっ。何より仕事が出来る!!」


グッと拳を握り、先輩自慢をする悠。確かに、悠はセラビーシェルに懐いているようだった。


「せやろせやろ。最近は、グランと一緒になって、うちのドレスも作りおるからなあ」

「それっ。裁縫がめちゃくちゃ早くて正確なのっ。ミシンかっ! ってツッコミそうになったよ!」


裁縫が出来る同年代の男子というのが、悠にはとてもポイントが高いらしい。


「称号に『裁縫名人』あるらしいでなあ」

「へえっ。そっか、その称号が出るとかカッコいいよねっ。なんか、世界に認められましたって感じでさっ。あっ、私も称号増えたんだよ! 『異世界人』だけだったのに、『万能メイド(仮免)』って! 仮免だよっ、仮免っ。笑った」


免許取るものなんだと笑ったらしい。


「それ笑うわ……ってか、称号あんま無かったんやな?」


意外だと首を傾げた。すると、悠も首を傾げ返してくる。


「え? だって称号って、成人までに二つあったら凄いらしいって聞いたよ?」

「……二つ……二つ? 種類か? 種類やろ? 種類で数えるんやよな!?」


まさか違うだろうと、リンディエールは天に向かって吠えた。これに、悠がうろんげな目を向ける。


「……リンちゃんまさか……そこもチート?」

「いやいやっ。ほれ、シュラやラビたんも三つはあったて」

「だってあの二人は凄いって分かってるし。三つなら、うんって思うよ」


この時点で、リンディエールの目は泳ぎまくっていた。


「あ、あれや。グランも多分五つか六つ……」

「グランさんとか、プリエラ師匠は経験年数が違うよ。それに、この前聞いたらプリエラ師匠は六つだって。ねえ……リンちゃんいくつ持ってるの?」

「……」


真顔で口を閉じた。


「リンちゃ〜ん。見て確認してよ〜。親友でしょ?」

「ううっ……分かったわ……【ステータス】」


久し振りに確認するなと思いながらそれに目を通した。



ーーーーーーーーーーーーーーー

個称  ▷リンディエール・デリエスタ

 (ウィストラ国、デリエスタ辺境伯の長女)

年齢  ▷10

種族  ▷人族

称号  ▷家族に思い出してもらえた子ども、

     家族愛を知りはじめた子、

     使用人と祖父母達に愛される娘、

     密かな愛され系女子(?)、

     目覚め人、エセ関西人(爆笑)、

     神竜王(仮)の親友、

    *異世界人の悪友、

     魔法バカ(特異)、

     ゴブリンキングを倒した者、

     辺境の小さな英雄、

     忠誠の誓いを受けし者(2)、

     レベリング馬鹿、

     兄に溺愛される者、

     年上キラー(!)、

     迷宮の覇者(仮免)、

     きらめき⭐︎あいどる、

    *カレイに?怪盗?(笑)、

     神竜王(仮)の加護(特大)、

     神々の観劇対象(ニヤリ)

               【固定】、

     神々の加護(特大)、

     神々と繋がる者(任命!)

     


レベル ▷295

体力  ▷6572000/6572000

魔力  ▷10350000

     /10350000


魔力属性▷風(Max)、火(Max)、

     土(Max)、水(Max)、

     光(Max)、闇(Max)、

     無(Max)、時(Max)、

     空(Max)

ーーーーーーーーーーーーー


ぱっと見、また称号がバンバン増えているというわけではないので、少しだけホッとする。


しかし、数は異常であることに変わりはない。


「……か、数えるで?」

「うん」


期待する目を向けられ、それならばと素直に数えた。


「っ……に……」

「えっ、十二? 凄っ」

「いや……二十二……」

「……へ?」


綺麗な高めの『へ?』だった。これに、リンディエールは満足げに頷いた。意外性が示せるのは楽しいものだ。


「二十二や!」

「えぇぇぇっ!!」


この後、異常だろうという目を向けられたのは、不本意だった。


**********

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