第008話 リンはワシの孫じゃ!!

ギルドに入る手前でヒストリアから通信が入った。なので、どのみち十歳の子どもでしかないリンディエールが入っても混乱を招くだけだと遠慮し、外で待つと言って祖父母と別れた。


『お待たせヒーちゃん』

《大丈夫か? どうなった》


声音から心配しているのが分かってクスリと笑う。


『今、じいちゃん達のパーティメンバーと冒険者ギルドに来た所や。じいちゃんらは『大鳥たいちょうの翼』っちゅうAランクパーティやってん。やで、冒険者らの指揮を頼んだわ』

《まとめるのは問題なさそうだな。だが……さっきキングが動いた。そっちに出て行くぞ》

『マジかっ! 場所分かるか?』

《ゴブリン達の大まかな場所を書いた地図を用意した。転送する》

『頼むわ!』


亜空間収納ではなく、特別なバックに転送してくれる。これは対になるもので、中身を送りあえるのだ。ただし一つまで。なので、入れっぱなしにしないように気を付けなくてはならない。


中は亜空間仕様なので、大きさは気にしなくても良い。


それを引っ張り出し、ざっと目を通して記憶すると、ギルド内に駆け込む。冒険者達で混み合う中をすり抜けて一番奥に。


「ファルじいちゃん! 最新情報や!」

「何!? どれ……っ、これはっ……今か?」

「今や」


どこからとか、誰からとか余計な質問はない。ファルビーラは地図をパーティメンバーと確認し合う。


「すごいな……動きが分かる。よし。担当場所を決めるぞ。どうだ参謀殿」


参謀殿と呼ばれて視線が集まるのは祖母だった。


「これが本当なら対策が確実に考えられるわ。すぐに作戦を立てるから、冒険者達を六つに分けてちょうだい。力を均等になるように頼むわ」

「分かった。ギルド長!」


すぐにファルビーラはギルドのまとめ役を呼ぶ。そして、素早くグループ分けがなされていった。


「リンはどうする」

「ウチは一人で遊撃に回るわ。あと……この辺の武器使ったってや」

「っ、こ、これは! な、なんてこと!」

「なんと!」


血を浴びたい発言をしていた女性と病気だった男がドサドサと出した武器に群がる。


「いけるわ! これを使えば、ランク一つ上げたようなものだわ! あなた、手分けして配るわよ!」

「分かった」


この二人、夫婦だった。一人一人見極めて武器を手渡していく。終わったら回収すると忘れず伝えておいた。今回は戦力を上げる必要があって渡すが、通常で実力に合わない武器を扱うのは危険だ。力を過信して無茶をするバカが必ず出る。


「それと、コレや」


次に出したのは薬類。回復薬の低級、中級、上級、万能薬の初級が各百入ったマジックバックだ。回復薬は体力と魔力を回復させる。等級によっては怪我も多少は治る。万能薬ほどとは言えないが、治癒魔法という怪我や異常状態を治せる魔法を扱える者が居るため、それほど問題ではないだろう。


渡したのは治癒魔法の使い手らしい女性。息を止める様子を見て、その夫の片腕がなかった男が中を覗き込んで目を丸くした。


このパーティ。綺麗に三組の夫婦が出来ていて感心する。


「っ……」

「見たことねえよ、こんな量……っ」

「そのバック、中の物を不壊の魔法で守るようになっとるで、乱暴に扱っても問題ないで」

「うわ〜……まさかの国宝級っ……」


男が乾いた声を上げた。


「それ、二つ渡すで、二人で手分けして使ったってや。心配せんでも、後で金払えなんてケチくさいこと言わんでな。遠慮せず使ってや」


男の方にも同じ物を押し付けるように渡すと、リンディエールはファルビーラに一言告げる。


「先に出るわ。なるべく、まんべんなく間引くよって、しっかり体制整えてから来てや。時間稼ぎは任しとって」

「っ、だがっ……分かった。危ないと思ったらすぐに引くように。気を付けなさい」

「それ、言われ慣れとるわ。任せえっ」


リンディエールは可愛らしくワンピースを翻して、一人飛び出して行った。


残った冒険者達は呆然とする。十歳くらいにしか見えない少女。それが最前線に一人で向かってしまったのだ。


「ちょっ、ちょっとあなた! あんな小さい良いとこのお嬢さんをなんで!」


作戦を立て終わり、彼女は丁度目撃してしまったのだ。


「お、おいっ、ゆ、ゆするなっ。リンはワシらより強いから!」

「はあ!? ボケてんじゃないわよ! あんな小さい子がっ……」

「嘘じゃないわい! ワシが鑑定出来んかったんだぞ。本人の言葉を信じるなら、レベルは百超えてる!」

「……は……?」

「「「「「はあ!?」」」」」


レベル100はAランクの基準。現代でこのラインに到達しているのは、残念ながらこの国には居ない。


「あ、あの歳で百って……大人になったらどうなるんだよ……」

「人族じゃないんじゃ……」

「それならまあ……」


なんて聞こえたので、ファルビーラは祖父らしく、胸を張って主張した。


「リンはワシの孫じゃ!! 正真正銘、十歳の可愛い女の子だわい!」

「「「「「孫!?」」」」」


ギルド内が大騒ぎになる。特に、リンディエールの祖母は凄かった。


「私の孫ですって!? 天才じゃない!? 最強じゃない!? あんなに可愛いのに!! これは今後のことも考えて……」

「お、お〜い。作戦どうしたよ。リンが待っとるぞ〜」


危険を感じたファンビーラは、彼女から素早く離れて呼びかける。


「はっ、そうだわ! こうしちゃいられない! あんた達! あの子に迷惑かけたら殺すわよ! 死ぬ気で戦いなさい!」

「「「「「はっ!!」」」」」


怯えながらも、冒険者達は返事を返していた。これ以外の返し方が出来なかったともいう。


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