第6話 音
3発の音は近隣住民にも聞こえていた。 乾いた音。 いつもは山の中で仲間たちと共に、猪や鹿を相手に聞くはずの、聞き慣れた音だった。 隣の家の
「おい、今のは鉄砲の音だ‼ 駐在に電話しろ、なんかあったぞ!!」
そう言うと
「どうした、何があった?」 そう尋ねる巡査だが・・・。
「わかんねぇ。この家の中で3発銃声がしたんだ。俺も怖ぇからまだ中に入ってねぇよ!」
玄関の鍵は掛かっていない。 拳銃に右手を掛けながら巡査が引き戸を開ける。
“ ガラガラガラ ”
「お~い、どうした。何があった‼」
「ウワッ‼ 大変だ‼」 巡査は即座に管轄の警察署に連絡を入れ応援を要請した。
そこには、銃口を口に入れ後頭部を吹き飛ばされたNの死体が
この晩は、村中が大騒動となった。
無残な姿になった三人の死体を巡査が見つけ、“ ハぁ~~ッ ”と震えながら息を吐いてから、“ ハッ‼ ”と思いついた。
「娘・・、E子、E子はどうした、どこにいる!」
隣家の主は、巡査と共に玄関に入りNの変わり果てた姿を見てしまい、そのまま玄関先にへたり込んでしまっていた。 このため巡査は一人で家中を見て回りE子を探し回っていたのだった。
しばらくして、連絡を受けた消防団の男たちがやって来て玄関先にへたり込んでいる隣家の主に尋ねる。
「どうした、何があった。 しっかりしろ!!」 分団長が声を掛け、別の男が中を覗こうとすると、
「よせ、見るな! みんな死んでる・・・。 今、お巡わりが調べてるから中に入るな!」 そう言ってみんなを制止した。
巡査が応援を要請してから1時間半を過ぎた頃、数台のパトカーがけたたましくサイレンを鳴らしてやって来た。
巡査は応援に来た警察官たちに状況を説明し、これから消防団を集めてE子の捜索をすることになった。この家には巡査と鑑識の警官2名が残り室内をくまなく捜査していた。
鑑識の一人が廊下で息子Hの死体の写真を撮っていた時に、気配を感じ廊下の奥に視線を向けた。
「誰だ!! ・・・ウッ・・・。」
「どうした‼」 もう一人が驚いて近寄り声を掛ける。
「今、廊下の奥にグレーっぽい服の男が立っていたような気がしたんだが・・・。」
「気がした???」
「ああ、・・・俺が声を上げると、壁にスーッと消えたように見えた。 ・・・目の錯覚だと思うが・・・。」
「まあ、現場じゃたまに見間違えることもあるさ。俺は二階へ行ってみる。」
二階へ上がり息子の部屋をみるが、机の上に受験勉強中の後が残されているだけで特に異常は見られなかった。数学の問題集、書きかけのノート。何かで突発的に下へ降りたと言った様子がうかがえる。 E子の部屋では巡査がE子の手がかりになるものを物色していたが、ベッドの上に漫画本が二冊置いてあるだけで変わった様子もなかった。
巡査が、引き出しの二段目の奥からノートを見つけ出した。小学生の女子らしい、好きな漫画のキャラクターのノートだが、何も書いていない。買ったばかりで使っていないのか。
ページをめくり丁度真ん中のページを開いた時に、黒の太いサインペンで、
《 のろってやる!!!! 》
とだけ・・・。 強い怨念がこもったように殴り書きされていた。
「この子には以前から何かあったようだ!!」
そう考えた巡査は消防団員を通じて情報を収集しようと動き出した。 だが、なかなか手がかりになる様なものは見つけられなかった。
結局、警察と消防団で手分けをして明け方まで捜索が続けられたのだが、E子の消息はいっこうにつかめなかった。
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