第4話  灰色の男


 ある晩の事。 


 寝ていた娘がトイレに行きたくなって起きてきた。廊下を歩いていたその時である、

「キャッ‼」と大声で悲鳴を上げた。


「E子、どうしたんだい?」驚いた母が駆け寄って尋ねると・・・、


「今、そこに変な人が立ってたの。灰色の痩せた男の人。 あたしが“キャッ”って言ったらスーッと壁に消えて行ったの!」 


 E子には少々霊感があるようだ。Yの幽霊が見えていたらしい。


「バカな事言うんじゃないよ、どうせ寝ぼけてたんだよ。」


「あ~ぁ、一体この家はどうなっちまったんだろう? この先どうなるんだ、どうすりゃいいのさ・・。 あの噂は本当なのかなぁ~? 優曇華の花だったのかなぁ~?」


 もう、ウンザリだと言わんばかりにため息をつくF子だった。


 亭主のNは元々酒好きだったが、大怪我の後仕事も思うようにならず、晩酌の量が増える一方だった。初めは怪我の事もありF子も気を使っていたのだが、毎晩大酒を飲み、次第にクダをまくようになった亭主を見かねてとうとう切れてしまった。


「とうちゃん、いい加減にしなよ! 気持ちは分かるけど毎晩飲み過ぎだよ。子供達だって嫌気がさしてるよ。しっかりしておくれよ‼」


「うるせぇ! 飲まなきゃやってらんねぇんだ。酒持って来い‼」


 とうとう夫婦喧嘩ふうふげんかが始まってしまった。


 毎晩のように始まる夫婦喧嘩に、ただでさえイラついていた息子のHも嫌気がさし、本を投げたり椅子を倒したりと自分の部屋で暴れていた。受験を控えていると言うのに学校の成績は奈落の底と言った有り様だ。

 

 娘のE子は元々明るい性格の元気な子だったが、あの一件以来、いじめられる事こそなかったが、周囲からうとまれ距離を置かれていて次第にふさぎ込む様になって行った。

その上幽霊まで見てしまい、それ以来何かにおびえる様になって行った。

 E子は毎日思い悩む様になって行ったが、相談すべき両親はすでにこの有様だ。


「もう嫌だ、どこかに行ってしまいたい」 まだ幼い小学生の少女がそこまで思い詰めている。何と痛々しい事だろう、可哀そうでならないが・・・。


 次第にこの家族は壊れ、破滅の道へと進んで行く。 これは本当に呪いなのだろうか?・・・。

 

 「アメリカは銃社会だ‼」と、ニュースその他で良く耳にするが、我が国[日本]はそんなことは無いから安心だ。などと高をくくっている諸氏も多いのではないだろうか?

 それは、あくまで拳銃や人を殺傷することを目的に作られた銃の事に過ぎない。  日本でも講習を受け免許を取れば銃を所持することが出来る。 


 そう、散弾銃やライフルと言った猟銃である。

 

 山間部に暮らす人たちは、野生の害獣対策であり、なおかつ猟が解禁になってからの冬場の楽しみの一つでもある。鹿や猪、熊など狩の後のジビエ料理も楽しみの一つだ。このため山村で暮らす人たちは、免許を取り猟銃を所持している人達が沢山存在する。もちろん免許の更新や銃の管理は法的に厳しく定められているのであるが、中には狩の帰りに銃を車のトランクに入れたままパチンコに行ってしまう輩も多いと聞く。リアルに怖い話である。


 さて、Nも御多聞に漏れず免許を取得していて猟銃を所持している一人である。ライフル銃を一丁、散弾銃二丁を所持している。元気だった頃は猟友会の仲間たちとよく狩に出かけていて、仲間内では[名人」と言われるほどの腕前を持ち、20年以上のキャリアを誇っていた。

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