第14話

 アシュリーの意識が段々と覚醒していく。

 まだ意識がふわふわとした心地の良い状態であった彼女は、自分に掛けられている毛布に気づく。


「私、何して……」


 アシュリーが自身の体を起こそうする。バサッという音共に毛布が彼女の体から離れる。

 この時、室内にも関わらず、肌寒さを感じる。

 不意に、近くにさっきまで自分が来ていた服と同じのが一式、無造作に散らかっているのを確認する。 

 自分の体を確認するアシュリー。




 そこにあるのは、生まれたままの姿をした自分。



 ぼんやりとしていた意識は一瞬のうちに覚醒する。

 恥ずかしさのあまり慌てて毛布で身体を隠す。


「んっ……」


 アシュリーは自分の隣から音がしたので見てみると、そこにいたのは……


 自身と同じく、生まれたままの姿をした、セシル。


 彼女の姿を見て、アシュリーは先ほどまで二人で行われていたことを、思い出す。


「(わ、私……始めてがこんな場所で、女の人と……)」


 顔を赤くしているアシュリーを尻目にセシルが目を覚ます。


「目を覚ましてる?」


「セ、セシルさん……あの、私たち……2人で……」


「覚えてる……かけ忘れた?」


 セシルはアシュリーに聞こえないようにそうつぶやくと、アシュリーのほうを向きなおす。


「セ、セシルさん……?」


 アシュリーは、セシルに見つめられると、恥ずかしさとドキドキで身動きができずにいる。

 セシルは、アシュリーの目を見ながら、彼女にある魔法をかけようとする。

 しかし、アシュリーの様子に変化は見られない。


「魔法が効かない?」


「へー。初めてだね。こんなこと」


「魔法?それに今の声はいったい……」


 アシュリーは、ここにいる二人以外の声がしたことであたりを見渡すが他に人は誰もいない。


「今の私の声も聞こえるなんて。面白い子」


「あのセシルさん。さっきから、変な声が聞こえるんですけど……」


 すると突然、セシルの胸元に見たことない魔法式が浮かび上がり、胸元から1冊の魔導書が出現する。


「う~んっ。久しぶりに出てきた~。いやー、さっきはいいものを見れたよー。久しぶりに、セシルのあんな乱れた姿見ることできた」


「リリス。勝手に出てこないで」


「これは……魔導書?この魔力はさっきの……」


 アシュリーの目の前に出現した魔導書から発せられる魔力は、先ほどの戦闘で、最後にセシルから発せられていた魔力と同じものであった。


「は~いっ、アシュリーちゃん。私の名前はリリス。昔は魔神なんて呼ばれてました。今は、ただの魔導書でーす。好きなのは女の子。よろしくね~」


「魔人……魔導書……リリス……『7つの魔神書』の1冊?」


「すごーい。よく知ってるね~」


「今読んでる本に載ってたので。まさか本当にあるなんて……」


 セシルが読んでいる本。先日露店で見つけた。保存魔法のかけられている本のこと。

 本の中身はどこかの国の物語になっていて、簡単に言うとこんな内容。


『100年前、世界を最悪が襲う。後に魔神と呼ばれる7体の存在が、暴虐の限りを尽くしていた。人類は多大な犠牲の下、7体をそれぞれ魔導書に封印することに成功し、以降安寧が訪れることになる』


 アシュリーの知る歴史には、こんな内容はなかったので、彼女も物語だと思っていた。しかし今目の前にこうして存在している。



「今はこうして、セシルと気ままな二人?旅をしてまーす」


「それが本当に魔神書なら、今もどこかで封印されてるはずじゃ……どうしてセシルさんがそれを所持しているのですか。もし、魔神書が私の知ってるものと同じなら、このまま見て見ぬふりはできません」


 アシュリーは、少し警戒をしている。


「……分かった」


 セシルが話を始めようとしたとき。


「あのさあのさー」


「何?」


「二人とも。服着ないの?」


「……そういえば」



 そう、二人とも服をまだ着ていなかった。


「忘れてた……うう……」



 アシュリーもそのことを思い出し、恥ずかしさのあまり、手元のまだあった毛布で顔を隠す。


「……ごめん」


「セシルさん!?」


 セシルはアシュリーの姿を見て、自らに湧き上がってくるものを抑えることができなかった。

 アシュリーに迫るセシル。



「いいねいいねー。それじゃあ私も」



 魔神書のページが開きだし。独りでに魔法を発生させる。

 それは、対象の興奮を高めるもの。これを二人に使用した。



 ということはつまり……




「いや、ちょっ……んっ……」

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