第12話
アシュリーは、ゴーレムの体に打撃を行う。
しかし、ゴーレムは微動だにしない。
すぐにゴーレムの反撃が襲い掛かってくる。
アシュリーはこれをかわし、一旦距離をとる。
「(私の物理攻撃では傷ひとつ、ついていない。となると……)」
アシュリーは、ゴーレムの周囲をすばやく移動し、行動をかく乱する。
ゴーレムが攻撃する一瞬の隙をついて、魔法で作り出した氷柱をゴーレムめがけて放つ。
魔法の当たった部分の装甲は、破壊することに成功する。
ゴーレムは、魔導機と呼ばれる魔導師が魔法で操作する道具のひとつで、特徴は魔力の核を固い岩が覆っていること。
表面の装甲は、物理攻撃に対する耐性が非常に高い。その反面、魔法攻撃に対する耐性は皆無である。
そのためアシュリーのとった行動は、魔法攻撃で装甲を破壊して、ゴーレムの魔力の核を露出させること。
ゴーレムの攻撃をかわして、魔法攻撃で装甲を破壊して魔力の核を探していく。
何度かの攻撃の時、アシュリーの攻撃がゴーレムの胸の部分に命中する。
その時、一瞬何か光るものが見えた。
「(見つけた!)」
アシュリーはゴーレムの魔力の核を発見する。
しかし、その部分を守るかのように、すぐに装甲が修復されてしまう。
「(修復速度が速い。だったら……)」
アシュリーは、核が見えた場所に攻撃を集中させる。修復速度を上回る速度で攻撃する作戦。
しかし、アシュリーの攻撃よりも修復のほうが早い。
「(このままじゃジリ貧。ここは一か八か……)」
「私が囮になる」
「セシルさん!」
その時、セシルがゴーレムめがけて走っていく。
セシルはゴーレムの注意を引き付けているが、その動きは、前に見たときほどのキレはなく、いつやられてもおかしくない状態。
アシュリーは、セシルの様子を横目に魔法を発動させる準備にかかる。
アシュリーが発動させようとしている魔法は、先ほどまで使用していた魔法と同系統の魔法で、今までのは、小・中規模の魔法を複数展開し、広範囲の殲滅。発射から着弾までの速度を重視していた。
今回使用するのは、正に一転集中ともいえるもので、大魔力を濃密に圧縮し、破壊力と貫通性を持たせるもの。
アシュリーは、集束系の魔法は得意ではなく、発動まで時間がかかっている。
あと少しで完成する……その時。
ドォン!と近くの壁に何かが激突する音。
セシルが吹き飛ばされていた。
ゴーレムがアシュリーに気付き、向かってきている。
「(もう少し……あともうちょっと……)」
ゴーレムの攻撃がアシュリーに届きそうな距離まで近づいてくる。
魔法陣からは巨大な氷が発生し、形を模し始めている。
「……これ、で!」
それは巨大な氷の槍を形どる。
「いっけえええええ!!」
氷の槍はゴーレムの核めがけて発射される。
槍と、核を塞ぐようにゴーレムが腕を出す。ゴーレムの腕と氷の槍が激しくぶつかり合う。均衡していた二つの能力だったが、ゴーレムの腕にひびが入り始める。
氷の槍はそのまま、ゴーレムの腕、核を覆っている装甲を破壊し、魔力の核を貫く。
「はぁ、はぁ……やった、の……?」
アシュリーはその場に膝を崩して倒れ、立ち上がることができない。
この魔法は、今までアシュリーが使ってきた魔法の中でも一番に魔力の消費が激しく、戦闘どころか、意識を保つので精一杯。
「……いや」
動きを止めていたゴーレムはその場にたたずんている。形を保ったまま。
魔力の核を停止したから原型をとどめることができずに崩壊していくはず。しかし目の前のゴーレムにはその兆候が見られない。
すると、ゴーレムの中を魔力が循環しているのを感じる。ゴーレムは、その動きを再開させる。
セシルがすぐさま、アシュリーを抱えゴーレムから距離をとる。
「どうして……確かにあの時、核は破壊したはずなのに」
「核は破壊したのに動いてる。ゴーレムは核がないと動かない。つまり……」
「核は、もうひとつある」
「そんな……核を2つ持つなんて、聞いたことない」
ゴーレムと対峙する二人だが、状況は最悪。
アシュリーは既に満身創痍。セシルも万全の状態ではない。
「こんなの、どうすることも……」
絶望のアシュリーは、横にいるセシルのことを見る。
「はぁ、はぁ……分かってる……仕方ないか」
セシルはふらふらと立ち上がると、ゴーレムと対峙する。
「セシルさん?」
「行くよ――――×××」
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