第11話

「この遺跡は、ここに都市ができるより遥か昔からあったそうです。文献自体もほとんどなくて、何度も調査は行われたみたいなんですが、何も発見はなかったそうなんです。あの部屋も、あんなものが出たことは今までになかったはずなのに……」


「恐らく、侵入者迎撃用のシステムが発動したんだと思う。少し前に発生した魔力が恐らくそれ」


「セシルさんは、この遺跡の中について詳しいみたいですけど、どこでそれを?」


「ここ以外にも似たようなところに行ったところがあるから」


 道中でセシルは、作動しているトラップをことごとく見破り、二人はトラップをかわしながら遺跡の奥へと進んでいく。


「セシルさんは、この遺跡についてどこまでわかっていますか?」


「……私もこの遺跡についてはよく知らない。遺跡の仕掛けは聞いたから知ってただけ」


「聞いてた?いったい誰から……」


「着いたわよ」




 二人は、遺跡の最深部に到着する。

 中は、先ほどよりも一回りは大きい部屋となっている。

 部屋の壁面には、壁の隅から隅までアシュリーの見たことない文字が記されている。

 部屋の中央には、ぽつんと台座が置かれているだけで、台座の上には何もない。



「何もない、か……」


「これは……文字、ですか?今までに見たことない。いったいどこの国の言葉なんだろう」



 セシルが台座のもとから離れてアシュリーの近くに歩いてくる。


「セシルさん?いったい何して……」


 セシルはアシュリーの横を抜け、壁の目の前まで来ると、おもむろに壁に手を触れる。

 すると、セシルの胸元から激しい光が発せられる。

 それに反応するかのように、壁面の文字が一斉に輝きを放つ。

 アシュリーは、目の前の光景に、何が起きているのかわからず、動けないでいる。


 しばらくすると、光は収まり、何事もなかったかのように元の光景に戻っている。


「今のはいったい……セシルさんは何をしたんで……」



 ガサッ。

 セシルはその場に片膝をついて立ち上がれないでいる。

 呼吸は荒くなり、胸の部分を右手で抑えている。


「セシルさん!」


 アシュリーがセシルのもとへ駆けつけようとする。


「来ないで!」



 その瞬間、激しい地響きが部屋の内部で発生する。

 それに合わせて、二人が入ってきた通路を塞ぐように壁が出現する。出口はここ一か所だけ。

 床一面にまで広がるほどの大きさの魔法陣が発生。


「召喚魔法……」


 魔法陣の中から、先ほど二人が見たのと同じタイプのゴーレムが召喚される。

 しかし、その大きさは、先ほどは比べ物にならない程に巨大。



「セシルさん!」


 ゴーレムの攻撃が、セシルに迫る。

 咄嗟にアシュリーがセシルの前に立ち、防御魔法を張る。


「……駄目っ!」


 防御魔法は、一瞬の間防ぐことには成功した。しかし、次の瞬間にはあっという間に砕け散り、攻撃がすぐそこまで迫ってくる。

 セシルは、その一瞬の間にアシュリーを抱えて、ゴーレムの攻撃から距離をとることに成功する。


「セシルさん。出口が……」


「目の前のこれを倒さないと出られない仕掛け」


「ゴーレム……。本では見たことあるけど、実際に見るのは初めて」


「下がってて」


「駄目です!セシルさんそんなに辛そうじゃないですか」


 セシルは、相変わらず呼吸が荒くいつ倒れてもおかしくない状態。

 この時のアシュリーにはそう見えた。


「平気……」


「ここは私がやります。セシルさんは休んでてください」



 アシュリーは身体強化魔法を自身にかけ、ゴーレムに向かっていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る