第3話 普通の高校生って
3人で遊園地へ行った次の日から、
真一は学校に来なかった。
帰りにボソッと言った言葉が、聞き取れなかったが、嫌な予感がした矢先だった。
放課後、先生に理由を聞きに入ったが
先生は家庭の事情と口を開くことはなかった。
進と香枝は、自分達ばかり夢中で楽しんでいた時、体調が悪くなっても遠慮して言えなかったんじゃないか。と、反省した。
学校帰りに進達は、真一の家にいくことにきめた。
ノート類等、結構な荷物を抱えて。
真一の家は、学校から10分位の近いところにある。
僕たちを出迎えた真一の母は、真一を、もっとキレイに整えた感じの顔だ。「あなた達ね、真一と遊園地に行ってくれたのは」と、泣きそうな声で話し出す。
その時話してくれたのは、衝撃的なことだった。
真一は難病を克服したのではなく、病気と戦っている最中に転校してきたのだった。
もともと、小さなころから病のせいでろくに学校に通えなかった。それでも、院内学級や独学に近い形で、体調の良い日の合間に頑張って勉強は続けてきた。
だが、心が折れて二度の自殺未遂をしたのだった。いつ死ぬかわからないのに、なんで生きなきゃならないの?なんで、ぼくは生きてるの?寡黙な真一の溢れ出る言葉に、何も言ってあげる言葉がみつからない。そのことが親として傍にいるのが、つらかった。
病院に運び込まれた時に、私達は涙がとまらなかった。なんとか出来ないものだろうか?その心の空白を、埋めることは出来ないのだろうか?
考えに考えて、無理に学校に頼み込んだ。何年いや、あと何ヵ月の命、ひとつでも真一の心に楽しい思い出を残せないものかと。無理を承知で何回も足を運んだ。そのかいあって学校に、通えるようになった。
そして、初めて友達ができたとを、はにかんで話してくれた。「あなた達と行った遊園地、帰ってから楽しそうにはなしてくれたのよ。」懐かしそうに、静かに微笑む。
ジェットコースターを、何回も元とるために乗ったことや、かつ丼を二人揃ってかっこんで美味しそうに食べたり、女の娘と観覧車に乗ったことを、今まで見たことがない表情で、嬉しそうに喋べってくれた。(何だか、真一の母が言葉にすると、恥ずかしい。)また、つぎも誘ってくれたんだと、真一は、この病気に負けていられないといってた矢先に、熱出して・・・母の目が、うるんでくる
(この人は、今までどれだけ涙をながしてきたのだろう)香枝は、自分の母親とあまり年が違わない、目の前の女の人が心から気の毒に思った。
今は病院にいて、2.3日したら、家に戻ってくるらしいので、その時、また来ますといってあいさつをする。
しばらく香枝と、進は沈黙のなかたんたんと、歩いていた。
ふいに、進が口を開く
「なんか、気が重いよなあ、もう真一とは、かかわらない方がいいのかも」
「・・・」
「俺らみたいな、元気の固まりを前にしてたら、ますます落ち込むんじゃあないか」「・・・」
「おい、なんかいえよ」
わかってる。本当は、病人の相手が大変なこと。「私たちは、戻れるところがある。でも、真一は逃げられない。死ぬまで、病気と戦わなくちゃいけない」
「なんだよー。香枝。俺だけ悪者かよ。」
「わからない。たしかに、私たちが真一にこれ以上関わることは、とても苦しい。真一も、苦しいかもれない。でも、友達として真一のなかに、何か残せたら。そういうのって自己満足かもしれない、でもでも・・・」人間って、便利だよね。涙が、溢れてくる。そう、無理にいいたくないものを、代弁してくれる。
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