第2話 サラダ

3週間後の遊園地

あれから、まずは三人で会ってみようってことになった。


待ち合わせ10分前にかかわらず、進達は来ていた。

「は、早いね」と、いつになく緊張してしまう。

進と転校生の、隼 真一だっけ。

しっかし、今まであった男子どもと顔の造りが全く違う。

しかも進の横にいるのでかなり際だつ。美女と野獣か。いやいや、二人とも男だった。

華奢な体が儚く思えた。

(うっ、今まで周りにいなかったタイプだ。どうしよう。気楽に返事しちまったけど)


「来たな。なんだよ もっと、おしゃれして来いよ。今日は両手にイケメンなんだぜ」お前がいうかー。

5人兄弟の末っ子に生まれてこの方、スカートをはいたことがないし。俺の性格熟知している進に、いわれたくないなあ。

「まあ、この間廊下で紹介したろ。香枝は、さっぱりした女男だから、真一も、今日は気楽に楽しもうぜ。」真一は、照れた様子だ。

なーんて言いぐさ、まあいいや。

今日は、アトラクションに乗って乗って乗りまくれれば。

「こいつさ、アトラクションに目がないからフリー券買って元以上取ることしか考えてないから。真一は合わせなくていいからな、体調悪くなりそうだったら、いつでもいえよ。」えっ、遊園地に来て体調悪くなるって?有り得ない

確かに、透き通るような白い肌は病人のような……。

「今まで、入院してたから体力ないけど。人並みに、いろいろな所いったりしたいから。迷惑かけるかも、知れないけど……すっごく楽しみにしてたんだあ」真一は、か細い声で笑う。その、ほほ笑んだ口元は?!美しい。


真一に合わせて、かなり最初は控えめにしてたがジェットコースター好きの二人が、この機会を逃すわけがない。二人は、競い合うように流行りものを乗り出す。その間、真一は写メを取ったりして楽しんでいるようである。


「はあ、ひっさしぶりのジェットコースターおもしろかったー。ごめんねー。一人にして。」

「いいよ。僕、ジェットコースター系苦手だから。観覧車乗りたいから、香枝さんつきあってくれる?」

え、えっ、俺。

「おい、香枝指名だぞ。いけいけ、俺少し休憩してるから」進は、にやついている。気に食わないが、二人だけ楽しんでても悪いので行くことにする。

観覧車乗り場は

前に6,7人並んでいる程度ですぐ自分たちの番が来た。

観覧車が、二人の前に来た時にスタッフの合図で乗り込む。

元気だけが取り柄の俺としたことが、狭い観覧車の中で何を話したらいいのかわからない。

「ジェットコースター怖くないんだね。逆さ状態で、二人万歳してたでしょう。すごいねー」いつも、無口の真一が話を進めてくれてる。

「うん、全然怖くないよ。景色がさあ。逆さまなんだよ。スピードもついてるしスリル満点。」

「へぇ、じゃいつか二人に鍛えてもらって僕も、乗れるようになりたいなあ」

なんか、見れば見るほど、可憐だなあ。いやいや、なんか私、いや俺変。

慌てて返事する。

「進君と幼馴染なんでしょ。羨ましいなあ。そういう関係って。」

「まあ、兄弟が一人増えただけって感じかな。」話してるうちに、徐々に観覧車は上に登っていく。建物や周りの緑の木々の高さが目線と同じになっていく。


ずっと、病院にいたことや真一は、自分のことを知ってほしいと思ってか、いろんなことを話してくれた。まるで、浦島太郎みたいだと。今、流行りのものや場所、携帯でさえつい最近持ったこと。

話に夢中になって、ふと外に視線を移すと地上からはかなり離れていて、木々も建物も小さく見えている。「ここ、てっぺんだよー。真一」あっ、つい呼びすてになった。真一も気が付いたように、顔が恥ずかしそうに反面嬉しそうにもしている。



******

 


腹減ったな。腹時計は、待ってはくれない。丁度、昼過ぎでどこも混雑している。

俺たちは自分の好きな列に、並んでやっと休憩場所の机に戻ってくる。

思わず、真一のまえの小さな器のサラダに目がいく。

香枝が「おまえ、俺の半分やるよ」と、言って分けようとすると

真一は、慌てて手でさえぎる

「おれ、小食なんだ。もう、何年もそうだから。大丈夫」そうは、いっても。だから、青白いんだよとは、言えず。

進と香枝は、大好きなカツ丼定食を食べつくす。その間で、真一はキャベツの千切りをゆっくり食べる。香枝は青虫みたいだなと、思ったが口には出さなかった。

それでも、3人とも楽しめたようだった。


******



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