第27話 不潔です
金曜日。予告されていた数学の小テストが行われた。
カリカリとペンを走らせる音が聞こえていることから察するに、勉強会に参加したメンバーは順調に問題を解いたようだ。
俺自身も勉強のかいもあってたぶん満点を取れと思う。
何度も見直して、解き方が複数ある時は別の視点からも解いて検算した。
「ふぅ。終わった」
「珍しく疲れてるな」
「同じ問題を何度も解き直したからな。あれだけ頼られて満点じゃなかったら恥ずかしいし」
「ログボ野郎も大変だね~」
クククとからかうじゅうごは随分と余裕そうだ。
範囲は広いけど難しくはなかったし、じゅうごも手応えがあったんだろう。
「
「教えてもらってなかったら頭真っ白で終わってた」
「お礼って言ったら変だけどさ。ふぅっ」
「おおおう!」
突然耳に息を吹きかけられて身震いする。
やられると分かっていてもゾワっとするのに、不意打ちだとさらに破壊力が増す。
「
「へぇ~。なんかドMっぽい」
「ちょっと恥ずかしいけどウチも」
代わる代わるクラスメイトが俺の耳に息を掛ける。
当然、物理的な距離もだいぶ近くなり、良い香りが脳を刺激する。
「お礼って言っても課題クリアでうちらがおいしいんだけどね」
「ところでさ、実際
「それ気になるー。
「膝枕とかって男子の夢なんじゃない?」
女子達が勝手にヒートアップしていく様子を
「さすがにそんなことはしてないから。姉ちゃんは連続ログインの日数に関係なくしてくるけど……」
「あぁ……」
よし! うまく切り抜けた。
姉ちゃんのブラコンぶりは学校中で有名だ。姉ちゃんが俺に胸を押し当てたり、突然抱き付くのはログボになる前からの日常風景。
そんな姉ちゃんを引き合いに出せば諦めてくれると思ったんだけど、
「お姉さんは特殊な例だから置いといて、うちらが聞きたいのは
「ログボをきっかけに結構進んでんじゃないの~?」
「もしログボが終わっても、二人が幸せなら素直に祝福するよ」
彼女達の中では完全にいろいろな課題をクリアしていることになっている。あながち間違いではないけども。
「そうだ。今日で5日目でしょ? お昼一緒に食べよ」
「ほらほら、
クラスメイトに手招きされると、いつもは
その瞳には怒りの炎が灯っている。
「
「
怒りの炎は徐々に涙で鎮火されていく。正直、怒り顔よりも泣き顔の方が精神的にくるものがある。
「違う。
「……ごめん」
何に対してか自分にもわからない。
「やっぱりログインボーナスは不潔です」
そう言い残して
顔をうつむかせて涙を
「ちょっと
引き止めようとする
「
「よくない。よくないけど……」
俺がログボでいる限り
この生活を終わらせられる可能性は、今のところ本命の彼女を作ることだけ。
でも、今はその本命に拒絶されてしまった。
どんなにいろんな女の子からモテても、一番好きな人に嫌われてしまっては意味がない。
「
「体調不良?」
「本当に、後悔しないんだね?」
「今俺が行っても……さ」
「そう」
頭ではわかっているのに、お尻がイスに接着されたみたいに動きだせなかった。
それが今の俺が出した答えなんだと思う。
じゅうごも特にコメントせず静観している。
今は何を言われても辛い。本当に良い男だよ。じゅうごは。
「フゥー」
授業を受ける前に深呼吸をして気持ちを落ち着ける。
脈は速くなっているのに気は遠くなるような不思議な感覚。
もしかしたら
そんな恐怖が俺の自律神経を乱しに乱す。
これからどうするかは俺自身で決めるしかない。
誰かに後押しされたり、妨害されたりしない。
ログボを利用して琉未や他の子と付き合うのか、それとも……。
心の中で答えは出ているのに行動を起こす勇気がない。
やっぱり俺はヘタレだな。
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