第26話 憧れの先輩
「
「ん。なに?」
我ながらよく平静を装って返事ができたと思う。
「今日こそ、
言いかけたところで
「ねえ
「いや、水曜は休みだけど」
「それなら、きゅー姉に家庭教師お願いしよ。
「うちは構わないし姉ちゃんもたぶんOKすると思うよ」
「ほら。チャンスじゃん。
「で、でも……私は」
完全に相反する目的がぶつかり合っているわけだけど、こういう時は押しの弱い方が負けるのが常だ。
「
「もちろん。姉ちゃんも喜ぶよ」
ほんのちょっとだけ
姉ちゃんが関わると少しだけ表情が柔らかくなるところが可愛い。その役目を俺が担えるともっといいんだけど。
「そうだ。俺これから図書委員の集まりがあるから、先に入ってて」
「いや、さすがに家主が居ないのにお邪魔できないから。うちで待ってるから帰ったら連絡頂戴」
「……なんか今の二人、夫婦みたい」
「「んなっ!?」」
二人の声が重なった。息の合った反応に
「やっぱりお似合い」
「いや、別に特別なことじゃないって。
「そうだよ
「なら、長年付き合ってるカップル。実際付き合いは長いしウソじゃないでしょ?」
「カップルだったらもっとこうスキンシップがあると言うか……ねえ?」
「そうだな。それこそログボ程度じゃ済まない濃厚な……」
言いかけたところで琉未の顔が赤くなっていることに気付く。
ログボ程度じゃ済まないこと。先週末に
「どうしたの
「ななななな、なんでもない!」
「ふーん?」
こんな反応したら自分から何かあったと自白してるようなものだ。
「とにかくごめん。先帰ってて」
「あーはいはい。それじゃあまた」
大人しそうに見えて
油断してるとクラスの女子よりもカップル成立の後押しをしてくるかもしれない。
ログボを受け取ってない
「はぁ……なんでこうなるかなあ」
めちゃくちゃバランスの悪い三角関係だ。
「あっ!
「うん。ごめん」
早歩きで図書室に辿り着くと
初対面は友達に連れられて俺にログインした時。背は高いし金髪が目立っていたので印象に残っている。
スカートは衣服の意味をなしてるのか疑問になるレベルで短くなっていて、こんなギャルが図書委員と知った時は本当に驚いた。
「真面目そうな顔して遅刻とかギャップ萌狙ってる?」
「狙ってないから。ギャップで言ったら
「んー? ウチはクジ引きで選ばれただけだからギャップではないかなー」
俺の言わんとしていることは本人も自覚があるらしい。
クジ引きで選ばれただけとは言え、ちゃんと時間を守って委員会に参加するのは素晴らしいと思う。
「んで、早速お願いがあるんだけどさ」
「なに?」
「図書委員の当番、ウチの代わりに全部出てくれない?」
当番がいなれば
それに、やっぱりギャルの圧は強い。どうにも断る度胸がなくて二つ返事で了承してしまった。
***
「ただいま」
玄関を開けるといつもより靴が多かった。
見慣れた靴と見慣れない靴。それぞれ一足ずつ多い。
「
ドタドタと階段を降りてくるなり抱き付いてくる。
ひらりとかわしても良かったんだけど、ドアにぶつかってケガでもされたら困る。
「えへへ。委員会お疲れさまー」
「はいはい。で? もう
「そうなのー。まだ2年生なのに勉強熱心で偉いわあ」
それを言ったら姉ちゃんなんて1年の頃から学年1位なんだけど、それは言わないでおいた。
あんまり順位にこだわりがないみたいだし。
「ほら、手を洗ってうがいをしたら早速お勉強よ」
「うん。わかってるから一旦離れてくれるかな」
「一旦……ね」
「違うっ! ずっと離れてろ」
ズルズルと姉ちゃんを引きずって洗面所まで行くと、言質を取って満足したのかそそくさと去っていった。
今の数十秒で随分いろんな課題をクリアしたんだろうな。
顔も洗ってスッキリしたところで自室に向かうと、
「さ、
「いや、ここ俺の部屋なんだけどね」
もはや自分の部屋と言わんばかりに姉ちゃんがこの場を仕切っていた。
姉ちゃんは俺と
「
必然的に
妙に積極的だったあの時のことを思い出して自然と体が熱くなる。
「
「だ、大丈夫。人口密度が高くて暑くない?」
「まあ、多少は……」
うまく誤魔化したつもりだけど実際はそんなに暑くない。
「むしろちょっと寒いかも?
まるでぬいぐるみのように
黒髪ロングの女の子が目の前で百合みたいなことを繰り広げていて目のやり場に困る。
「ちょっときゅー
「バカッ! そんな目で見るか」
「じゃあどんな目で見てたの?」
「いや、それはその微笑ましいなって」
「やっぱりいやらしい」
「なんでだよ」
仲の良い先輩と後輩で微笑ましいのは事実だ。
姉ちゃんのポジションが自分に置き換わっていたら更に良かったけど。
「
「あーこれね。こういうごちゃごちゃした問題は……」
「邪魔者は消せ。ですか?」
「あれ?
「この前、
ふと
俺が教えたことを覚えてくれたこと、俺から教わったことを姉ちゃんに話してくれたことが嬉しくて、ちょっと照れ臭かった。
「さすが
「姉ちゃんに教わったことを
自身の成績が良くて教えるのもうまい。
そんな姉ちゃんの弟だから俺もそれなりの成績になれたんだ。
「でも、教え方は
「俺、何もしてないよね!」
「ふふん。どうかしら? 間近に迫った
「してないから!」
呼吸した時に酸素と一緒に匂いが入ってきただけで意図的に嗅いだわけじゃない。
だからセーフ!
「あの、先輩。また来てもいいですか?」
「もちろん。
お友達の部分を強調していたのはきっと気のせいだ。
姉ちゃんも俺と
その上で、自分を恋人として受け入れてもられると信じている。
「
「
ギュッと抱きしめると
こんなに
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