第23話 急接近
「
「おはよ……ございます」
今日も
一方、姉ちゃんは生徒会の仕事で早めに出発したので俺は一人だ。
「きゅー
「肩の荷が下りた気分だよ」
「リアルに肩にぶら下がってるもんね」
「そうだ。勉強会のことなんだけどさ、
「いや、してない」
基本的に
中学の頃からそういう関係が続いたせいで今なら聞きにくいというのもある。
「きゅー
若干戸惑っているようにも見えるけど、こくんと頷いてくれた。
「そうと決まれば善は急げよ。学校が近付くとこのログボ野郎に人が群がるから」
「うぅ……それは俺のせいじゃないんだけどな」
「
「そう思います」
この傷を癒すにはID交換しかない。
「ほらほら。スマホだして」
「おう」
「うん」
ID交換なんていつ以来だろう。アップデートで微妙に画面レイアウトが変わるからちょっとややこしい。
「じゃあ、俺が読み取るから
「は、はい」
「お互いに向かい合ってるとQRコード読み取りにくくない? ほら、並んで並んで」
まるでカメラマンのように俺と
たしかに画面が反射してうまく読み取れなかった。
「そんなに離れてたら読み取れないって。えい!」
「おわっ!」
小柄だけど遠慮のない攻撃は人をちょこっとだけ動かすには十分な威力だ。
「ひゃっ!」
スマホを持つ手で俺の体をガードしてくれたお陰で結果的に転倒せずに済んだ。
「ごめん。
「は、はい」
「
「ごめんごめん。そんな距離感じゃいつまでも読み取れないと思って」
口では謝っているものの、その得意気な表情からは『感謝しなさい』というメッセージを読み取れた。
「ねえ、
「ほらほら。早く。遅刻しちゃう」
「そうだな。ホントごめんね」
「平気……です」
ホーム画面には『
「この髪が短いのって
前髪で表情が隠れているのは変わっていないけど、姉ちゃんと出会ってから伸ばし始めていたと思う。
「はい。この頃からどれくらい
「今のロングもいいけど、この頃もショートも可愛いよね。
まだ
当時は全然意識していなかったけど髪が短い
「って言うか、
「名前が
「高度過ぎるでしょ。この際だからアイコン変えなさい。
「は? え?」
俺からスマホを奪い取るとタタタっと距離を取る。
何がなんだかわからないでいる俺と
「はい。いくわよ」
カシャっとスマホからシャッター音が鳴る。
もしかして、撮られた?
「ふふん。
「出るわねじゃねーよ!
「なら、
俺の顔だけが丸く切り抜かれていて
「ふふん。これですぐあんたって分かるわ」
「むしろ連立方程式の方が個性的で分かりやすいだろ」
「そう?
「私は……どっちでもいいかな」
「……」
そうですよね。俺のアイコンなんてどうでもいいですよね。
俺は涙をグッと堪える。
むしろ姉ちゃんとID交換させてあげた方が良かったかな。
「と、とにかくスマホ返すわ。ありがと」
「お、おう」
ただ渡すだけでいいのに、丁寧にお釣りを渡す店員さんのようにわざとらしく手を添える。
この行為が手を繋いだと見なされたらしく
「
「ふふん。11日目。きゅー
「じゃあ
「そんなことは……ねえ?」
クラスメイトにはやし立てられた時は困惑気味だったのに、
まあ幼馴染という意味では特別な存在ではあるけど。
「まあ、他の女子に比べれば」
「良かったね。
「う、うん」
俺が付き返すとでも思っていたのか、それなりに特別な存在だと認めたら妙にかしこまってしまった。
必死に
「そうだ
「ああ、すぐに消して……」
「消さなくてもいいですけど、誰かに見せたりはしないでくださいね。特に先輩には」
どうして姉ちゃん? と思ったけど、元から誰かに見せる気はない。
むしろ消さないでいいと本人からお墨付きを貰えたことの方が嬉しかった。
「先輩の大切な人とツーショットなんて、先輩に嫌われちゃうかもしれないじゃないですか」
「姉ちゃんはそんなこと気にしないと思うよ。むしろ仲良しで嬉しいとか言って喜びそう」
「……
「そうなのよ。本当に苦労するわ」
「うぅ……」
女子二人に責められて、有頂天だった心が地に堕ちていく。
やっぱり結託した女子は恐い。仲が良い場合は特に。
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