第22話 ほうれんそう
結局、今日は
気まずいというのもあるけど、週明けでログインする女子が多くてその処理で休み時間が終わってしまった。
いくら何度か移動したとは言え、年頃の女子の部屋が見えるのはマズいとカーテンは閉めてる。
電話をして無視されるのは辛い。
それならいっそ、カーテンを開けて
運試しのつもりでカーテンを開けると、窓辺に
「今日はなんかごめんね」
「なんで謝るんだよ」
「
俺も驚いた。俺と
「それと例の勉強会、姉ちゃんと示し合わせたろ?」
「あ、バレた?」
「姉ちゃんからの提案に何のツッコミも入れないなんて二人の共謀としか思えん」
「ふふん。さすがあたしが見込んだ男ね」
「なんで勝ち誇ってるんだよ」
正々堂々と戦う。ライバル同士である琉未と姉ちゃんが誓い合ったことだ。
「なあ、
「きゅー
「うん」
「
「
自信に満ち溢れた表情はまるで子供のようで、それでいて湯上がりの色気のギャップが俺の体温を上昇させた。
今の俺を
ほとんど姿が見えない月はその答えを教えてはくれなかった。
「
「あたしがどれくらい遠慮しないかって言うとね」
そのまま左手の指を絡ませ、恋人繋ぎのような状態になった。
「これで今日のログイン完了。連続ログイン10日目」
「お前まさか14日目に……」
無言で首を横に振った。
「それは
「安心したよ。
「あるよ」
「え?」
自宅も
じゅうごの家には世話になれないし、あとはもう野宿くらいしか選択肢がない。
「
「いや、それは階段を飛ばし過ぎだろ!」
「最終的にそういう関係になりたいと思ってるんだよね?」
「
「は?」
「裏で邪魔するとか、そんな卑怯な手は使わない。正面からフラれて、ふふん、あたしのところに戻ってくるといいんだわ」
フラれて傷心のところを狙うとかとんだ悪女だ。でも、実に俺の幼馴染らしい。
勝ち目は薄いけど絶対に
「おいおい。なんでフラれる前提なんだよ。頼れる幼馴染が味方してくれるんだろ?」
「さらにきゅー
「初恋が実るなんて俺は幸せ者だ」
そう言った瞬間、絡み合っていた指が解かれ琉未の顔が一気に曇る。
まるで今宵の空模様のように。
「
「……」
「ふふん。初恋は実らないって言うしね。2回目の恋はあたしにしておきなさい。幸せにしてあげるわよ」
声が震えている。目からは今にでも涙がこぼれそうだ。それを必死に堪えている。
「そう。これからは
「言いにくいこともあるだろうけど、できるだけ教えてね。でも、あんまり生々しいのはいらないから! キスした……とか」
「いきなりそんな関係にはならねーよ!」
ログボ目当てでもそんなことしないのに、
「あとは、しっかり
「
「それとこれとは別。あたしも
「体験者が語ると言葉の重みが違うな」
「でしょ?」
再び振り返ると、いつもの得意気な笑顔を見せてくれた。
完全に敵に塩を送る状態でも自分が勝つと信じるこの自信。
それが俺や
「ちゃんと告白して、ちゃんとフラれなさいよね」
「お前は応援してるのか失敗を願ってるのかどっちなんだ」
「両方……だよ。自分でもよくわからないけどさ」
夜の空気もほんの少しだけ暖かくなった。
このまま窓を開けて寝てもよさそうだけど、やっぱり閉めよう。
お互いに無言のまま、なんとなく自然にそうしていた。
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