第21話 勉強会のお誘い
俺の好きな人が
だけど二人の態度は全然変わらななかった。
「
「おう」
「おはよう。
「おはよ……ございます」
俺の意中の相手。
二人にとっては最大の恋のライバルとも言える存在だけど、そんな様子を
女子って恐い……。
「昨日はありがと。やっぱり数学と言えば
「お前は数学に苦手意識を持ちすぎなんだよ。もっと落ち着けば良い点取れるのに」
「二人は……昨日も一緒に過ごしたんですか?」
首を
クラスであまり目立たないから、この可愛さを知ってるのは自分だけだと思うとちょっと優越感だ。
「まあ、ほら、幼馴染のよしみでちょっと数学を教えてやっただけだよ」
「そうそう。何気に学年で10位になるくらいだし。無料の家庭教師みたいな?」
「ふーん」
長い黒髪からチラリと覗く目は何かを疑っている。
事細かに話せば疑われるようなことも多々あったのは事実だけど。
「休みの日に会うのって恋人みたいじゃない?」
今度は
俺が煮え切らないなら琉未に、という訳か。
「そうかなー? そんなこと言ったら春休みに
「うんうん。ふつうふつう」
力強く
「それなら
「えっ!」
姉ちゃんからの提案に
そんなに緊張しなくてもいいのに。
「あの、違うんです。私は二人きりの方がその……」
「
「え? あ、ああ、うん。古文がちょっと足を引っ張ってるから、そこを克服できればもう少し成績が上がる……かな」
姉ちゃんからしたら俺と
それなのに一緒に勉強する流れを作るなんて……何か裏があるとしか思えない。
「人に教えるとね。理解が深まるの。お姉ちゃんも
「勉強な! 勉強を教えてくれたんだよな!」
俺が成績上位になれたのは姉ちゃんの力があったからだ。
今はふざけているけど教えるのがうまくて本当に助けられた。
「
「いやいや、きゅー
「もちろん毎日じゃないわ。予備校だってあるし。たまには息抜きに
「姉ちゃんが爆発……恐いな」
「たしかに、何をしてくるかわからないわ」
俺と
日常で何の迷いもなくベタベタしてくる姉ちゃんが欲望を爆発させたらキスどころで止まらないかもしれない。
適度なガス抜きは大切だ。
「と、言う訳で
「
「決まりね。可愛い弟と後輩に勉強を教えているうちに愛情が芽生えたらどうしましょう」
「実の弟と女の後輩でそんな展開になるわけないでしょ」
一瞬目が合うと、うまくやれみたいな合図をウインクで送ってきた。
「ごめんね。朝から騒がしくて」
「平気……です。
学校ではなかなか見られない、
「私じゃ……あんな風になれません」
「姉ちゃんみたいにってこと?」
「はい」
髪は伸ばしてるみたいだけど、胸は残念ながら……。
きっとそういうことじゃなくて性格的なことだよな。
「いつも周りに人が集まってきて、その中心に居る。先輩は本当に遠いです」
「俺から見ても憧れるよ。姉ちゃん、すげーモテるんだ」
「今の
「悲しいことを言わないでくれ」
姉ちゃんに言い寄る男子だって下心があって集まってきてるんだろうけど、それは姉ちゃん自身が努力して手に入れた魅力だ。
ある日突然、降ってわいたような俺のログボとは全然違う。
「この前は、ログボをパパ活みたいって言ってすみませんでした」
「いや、いいって。気にしてないから。実際近いものはあるし」
「もし私がログボになって、知らない男子に毎日手を触られたり見つめられたらどうだろうって考えてみたんです」
「うん」
「すごく恐いと思いました。
あったとしても琉未の添え物というか、たまたま
「今も、ちょっとだけ緊張しています」
リュックのベルトをギュッと握る。
その白くて小さな手は、ログボ目当てで俺に触れてはくれない。
「まあ気持ちはわかるよ。気心がしれないって言うかさ、嫌われたくなくて身構えちゃうんだよね」
「私は別に……嫌われてもいいんです。
「……」
今ではそれなりにクラスの女子とは話すみたいだけど、まだ高い心の壁があるとは。
「
「たまにでいいので親友の
「貸すもなにも琉未は誰のモノでもないし。あと、
「……
まさか俺がその相談相手に恋してるとも知らずに。
「
「それは……俺も知ってる」
「ならなんで」
唇をギュッと噛み締める。どれだけ真剣に親友の恋を応援しているのか伝わってくる。
その気持ちが俺の胸をギュッと締め付けた。
「れーんちゃーん! 琉未ちゃんがイジワルする~」
「きゅー
「なら家ならいいの?」
「家でもダメ!」
恋のライバルは何やら揉めているようだ。
本気のケンカではなくじゃれ合いみたいなものだけど、なんか俺を巡って争ってるみたいで恥ずかしい。
「あ、
学校が近付いてくれば
ナチュラルに手を繋ぎ、通知を確認してらさっさと去っていった。
その様子を
「やっぱりパパ活とは違うよね。もはや海外式の挨拶みたいなモノというか」
「こうして目の前で見ると不潔さはあります」
「だから不可抗力なんだって」
必死に弁明する俺を見て、
誤解が解けて、ほんのちょっとだけ距離が縮まったのかもしれない。
そう思ったのも束の間、
「
「あ、あたしは別にログボとか興味ないし」
「だって、好きなんでしょ? 好きなら手を繋ぐのは自然なことだと思う」
「それはあたしが好きってだけで、
お前はどうなんだと問い詰められているようだ。
「……」
「どうしてですか?
「
「
姉ちゃんは俺の肩をポンと叩き、そのまま一人で歩いていった。
こういう時にウザ絡みしないで放置する優しさを普段から発揮してほしい。
余計に寂しくなっちゃうじゃないか。
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