第20話 川の字
「こうして川の字になって寝ると家族みたいね」
左側から姉ちゃんの声が優しく届く。
「あたしと
対抗心を燃やした
「んー? お姉ちゃんと
俺を挟んで火花を散らされても困る。いや、それ以前に
「どうしてこうなった!?」
俺は自分の記憶を辿る。
突然窓から押し掛けたにも関わらず姉ちゃんの分の食事までしっかり用意されていた。
おばさん
風呂に関しては、
どちらかが入浴中は二人きりになってしまうけど、そんな時はゲームに助けられた。
食事と風呂を済ませて、さて寝るかという時に俺は気付いた。
もうログインされてるから
連日お世話になるのも申し訳ないと思い、帰ろうとした時
「姉ちゃんが俺と
「なんか修学旅行みたいで楽しいね」
「すまん
「きゅー
ハハハと乾いた笑いが漏れる。
あー、だから彼氏ができないのか。
「ふふふ。今夜は寝かさないわよ」
姉ちゃんの瞳が
風呂上りで
毎日見てるはずなのに、今日の姉ちゃんは一味違うように感じるのは
「ちょっ! きゅー
「おいおい待て待て!
俺が自分から好きになるまでしないって話はどうした!?
それもいきなり3人でって。姉ちゃんの倫理観はそこまで崩壊していたのか!?
「修学旅行と言えば恋バナよね」
「「は?」」
どこからツッコンでいいか分からずマヌケな声がシンクロした。
まず修学旅行じゃねーし。3人でって意味深な言い方をするから変な想像しちゃったし。
「お姉ちゃんと
そんな
それに姉ちゃんは
俺の好意が
「姉ちゃん達が勝手に俺を好きって言ってるだけだろ。俺が言う道理は……っ!」
左右同時に手をギュッと握られた。姉ちゃんはスマホを家に置いてきたらしく、琉未のだけがログインを通知した。
「これであたしは9日目。ふふん。9日目の課題はどんなのか覚えてる?」
「そんなこと急に言われても……」
姉ちゃんは基本的にベタベタくっついてきて、いつの間にか課題をクリアされてることが多い。
だから課題内容はあまり把握していない。
「きゃー!
「え? そんなにすごい課題なの?」
まさか姉ちゃんもまだ実行していない過激な課題とか?
いやいや、キスの前にそんなすごいことがあるわけ……。
「
「ちょっ! 変なこと言わないで」
「だって事実だもん。これからそのおっぱいで
「違う! これは色仕掛けじゃなくて……そう、我慢比べ。
一体
「もし9日目の課題をクリアしちゃったら、それは
「えへへ。
切羽詰まった琉未に対して姉ちゃんは妙に楽しそうだ。
「
「
「そんなこと言われても」
両隣を挟まれて物理的に暑いのも相まって額に嫌な汗が滲んでくる。
緊張しているのか、琉未の息が荒くなりそれが右耳に掛かる。
ピンコーン
「ちょっと! 『耳に息を吹きかける』をクリアしちゃったじゃない」
「俺のせいじゃないだろ。お前が息を抑えろ」
「えへへ。それじゃあついでにお姉ちゃんも。ふぅ」
「ふおおおっ」
甘い吐息が左耳から全身に広がっていく。思わず変な声が漏れてしまった。
「
「仕方ないだろ」
「連ちゃんって昔から耳が弱いよね」
「あんた達、昔からこんなことを……」
「違うんだ。きゅー
ジトっとした目で見つめられる。完全に犯人を見る目だ。
必死に無実を訴えても有罪にされてしまいそうな雰囲気を醸し出している。俺は被害者なのに。
「
「そ、そうか?」
「えへへー。諦めないもーん」
それくらいで諦めてくれるなら俺だってこんな状況に追い込まれていない。
「ほら、
「んな!?」
「9日目の課題は『胸を押し当てる』なんだ」
すでに一度顔面で体験しているとは言え、あの感触を腕に押し付けられる。
ゴクリと唾を飲み込んで冷静さを取り戻す。
「ほら
「う……うぅ……」
日常生活の中で手が触れ合ったり、目が合うことはある。一緒に食事をするのなんて普通のことだ。
でも、胸を押し当てられるのは、よほどの信頼関係がないと難しい。
意を決して俺は好きな人の名前を口にする。
「
「……え」
さきほどまで小悪魔な笑みを浮かべていた
だから言いたくなかったんだ。
「……あたし、
「まあ
自分で言ってて泣きたくなる。でもこれが現実。
ログボ人生を送る限り好感度は上がりそうもない。
「そんなことは……ないと思う」
「え?」
「だって、一緒に遊んだことあるじゃん」
「それは
「ううん。
それは嬉しい知らせだと思ったけど、もしかしたら男として見られていない可能性もある。
憧れの
考えれば考えるほどネガティブな発想が沸いてくる。
「
「うんうん。その意気だよ
「ログボ目当ての女子達よりも、
「お姉ちゃんだって負けないわよ。
「そりゃそうだよ。
左手を優しく握られる。記憶に残ってないくらい昔から、ずっとそうしていてくれたように。
「正直に教えてくれて。ありがと」
左右の耳から同じ言葉が脳に伝わった気がした。
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