第13話 みんなでお昼
金曜日。学校でのログボ生活が終わると思うとほんの少しだけ元気がわいてくる。
さすがに耳に息を吹きかける女子は
手を繋いでる時点で体の一部を触ってるようなものだからハードルが低いんだろうな。
「今日はお昼みんなで食べるから。忘れないでね」
「もちろん
連続ログイン5日目の課題『一緒にご飯を食べる 4000円』
10秒見つめるとか、耳に息を吹きかけるとかをやらせた後にご飯を食べるって、課題設定の基準がよくわからない。
ちなみに姉ちゃんは昨日のうちにあっさりとクリアしている。
毎日全部の課題をクリアしているので1番電子マネーが貯まってるんじゃないだろうか。
「
「わ、私……は……」
俺も人のことは言えないけど、
「
完全に
これで断られたらいよいよ俺が嫌われてることになるけど、そしたらもう諦めるしかない。
「は……はい」
体をモジモジさせながら小さく頷いてくれた。
長い髪で顔が隠れてよく見えないけど、普段はほぼ
俺が一目惚れした笑顔だ。
二人きりの食事に誘った訳でもないのにすごく大きな一歩を踏み出せたような気がして心が躍る。
「せっかくだから
「あ、いや、私は……」
ログボに対していかがわしイメージを持ち、さらに
その
今ここで
「逆にさ、このままずっとログインしない縛りプレイもアリじゃないかな?」
「あはは。なにそれ」
「その縛りに何の得があるのさ」
「まあ、ウチらにはもうできないことだよね」
意味不明な理論だけど彼女達にはウケたようだ。
もう一押しで
「
「は、はい」
「ちょっとー。
「サイテー」
「毎日ログボを貰ってるみんなは何なの!?」
どうにか
本当は繋ぎたかったけど、パパ活と同じとまで言われたのでログボをきっかけに手を繋ぐのは何か違う気がする。
場も温まったみたいだし一安心かな。
「ありがと……ございます」
俺にだけ聞こえるような小さな声で
結局俺に対する敬語は抜けていないけど、ちょっとだけでも好感度が上がっていたら嬉しい。
なんて、すぐに打算的なことを考えるからダメなんだよな。やっぱり俺は良い人ではないと思う。
***
昼休み。みんなの机を寄せ合って昼食を取る。
なんだか小学校の給食の時間みたいだ。
「はいはい。
「一緒に食べればいいわけだから、さすがに隣は彼女だよねー」
「
カースト上位の女子達によって話があれよあれよという間に進められていく。
さらっと
「
「うぅ……女子の圧力が恐いんだよお」
「とか言って、まるでハーレムみたいな光景に鼻の下を伸ばしてるくせに」
「伸ばしてねーよ!」
「夫婦喧嘩はあとにしてもらって。それでは、いただきまーす」
別に号令はいらないと思うんだけど、このシチュエーションがそうさせるのかみんなで手を合わせて食事が始まった。
「幼馴染と付き合うって本当にあるんだねー」
「ぶほっ!」
「ちょっと
「だ、大丈夫。俺達、別に付き合ってないからね」
「そうなの?」
ここでしっかりと誤解は解いておきたい。
彼氏彼女の関係だからと課題クリアを強制されても困る。
「でも実際さ、
「たしかに。これって
「俺には全く身に覚えのないアプリなんだけどね」
彼女達は興味は俺と
ログボの正体は俺もよくわからないけど、まだこっちの話題の方が助かる。
「さすがにこの課題をクリアしたらログボも終わるんじゃない?」
うちの玄関まで来ていた女子がスマホの画面をみんなに見せる。
そこに映し出された課題内容はとんでもないものだった。
“181日目 両想いになってエッチする。 10億円”
「んぶごっ!」「ばはっ!」
俺と
「あはは。二人とも動揺し過ぎだって」
「条件めっちゃ厳しいもんね。180日以上連続でログインして、両親に挨拶済ませたり旅行に行かないといけないんでしょ?」
「でも幼馴染だから両親への挨拶って済んでるっしょ」
「お金もログボも貯まるしね」
姉ちゃんとのキスに気を取られて先の課題を全然確認してなかったけど、180日連続ログインするとこんな課題と報酬もあるのか。
わざわざ『両想いになって』と付けることで強引にも恋人関係にしようという思惑が透けて見える。
「これって宝くじが当たるようなもんじゃん? 参子ちゃん、羨ましいな~」
「彼氏ができてエッチしたら10億円。前世でどんな徳積んだのよ」
周囲の盛り上がりと反比例するように琉未の顔は青ざめていく。
「琉未、大丈夫か?」
「う、うん」
口ではそう言っているものの、やっぱり心配になる顔色だ。
「ねえ
「ごめん。ちょっと騒ぎ過ぎたね」
「せっかくだからさ、彼氏の肩で休ませてもらいなよ」
「いいじゃんそれ! 高さ的にちょうど良さそうだし」
心配してくれてるのか楽しんでいるのか、彼女達はどうしても俺達に恋人っぽいことをさせたいらしい。
これは『やれ』という合図なのだろうか。
わずかでも俺に対して恋愛感情があれば渋りそうなものだけど、わりと即答なのがショックだった。
「
「うん」
体調が悪いせいか琉未にいつものキレはなく、素直に俺の肩に体重を預けた。
同時に、琉未のスマホが通知を知らせる。
「待って。なんで課題完了?」
「一緒にご飯を食べるだったらウチらもクリアのはずだよね」
「まだクリアになってないよー」
突然の課題クリアにざわつく食卓。
180日目なんて遠い話は把握してなかったけど、14日目のキスまでならだいたい覚えている。
一度姉ちゃんにだいぶクリアされてるし。
それなのに迂闊だった。
「もしかしてこれじゃない。『7日目 肩に頭を乗せる。 7000円』ってやつ」
「マジか!
「幼馴染なら休みの日もログインできるもんね。こりゃ
「あ! お姉さんなら」
「実の姉と恋愛とか意味わかんねーから」
そんな中、
「みんな盛り上がってますね。少しの間、琉未をこのままにさせてあげてください」
「う、うん」
体調が悪そうだったので起こすのも忍びない。
もう完全に俺と
一つだけ良かったのは『実の姉と恋愛とか意味わかんねーから』という発言を聞けたことだ。
この言葉を姉ちゃんに聞かせてやりたい。これが世の一般的な女子高生の考えだぞ!
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