リンゴを食べる三本足のフェレット

増田朋美

リンゴを食べる三本足のフェレット

リンゴを食べる三本足のフェレット

その日は、雨が降っていて、ことのほか寒い日だった。その日は、親戚のお通夜があって、夫婦二人そろって出かけたんだった。そこまでは覚えている。でも、正直なぜ、こんな風になってしまったのか、見当もつかない。なぜか知らないけど、夫からいきなり一緒に乗るなと言われてしまったのだ。何だか流行りのテレビドラマによく出て来そうなシーンだが、夫は、直ぐに車を走らせて、帰ってしまったのである。理由は、よくわからないけど、そうなってしまったのだ。夫の話では、変な奴と楽しそうにしゃべっていたからという理由らしいけど、それだけで、追い出される理由になるんだろうか?

末田繭子は、そんな事を考えながら、傘も差さずに雨の中を歩いて行った。傘は夫がそのままもっていってしまったので、仕方なく、ぬれたまま歩いていくしかない。まるで、ずぶぬれのぬれねずみという表現が、ぴったりである。とりあえず、自宅までには、まだ一キロメートル弱はある事は、知っていた。

「おい、こんな雨の中を、傘も差さないで歩いているやつなんかいるか?」

と、不意に後ろの方から、男性がしゃべっている声がする。何だかやくざの親分みたいな言い方で、繭子はちょっと怖くなった。

「杉ちゃん、そんな言い方すると、怖がって逃げてしまいますよ。」

今度は、偉い人だろうか、綺麗な口調で、別の男性がそういうことを言っている。そして、なんだか小さな動物の声が、ちーちーと言っているのが聞こえてきた。一体その人物たちは何をしているんだろうか、繭子は後ろを振り向いた。

「おい、お前さん。なんで傘も差さないでこんな雨の中を歩いているんだよ。」

繭子の後ろに、車いすに乗った男性がいた。隣に着物を着た男性が、立っていた。二人とも雨コートを身に着けている。

「せめて、コンビニかどっかで、傘でも買っていったらどうだ?」

と、車いすの男性が、声をかける。でも、繭子はお金がなかった。お財布は、夫が車でもっていってしまったんだっけ。でも、そんなせりふ、この二人に言ったら、笑われてしまうかも知れない。

隣の、着物を着た男性が、自分の事をしげしげと見た。彼は、持っていた巾着を開けて、千円札を取り出した。

「これで、そこのコンビニで傘を買ってきてください。」

にこやかにそういう男性は、夫とは全然違った雰囲気を持っている。ちょっとしたことで、がーがー騒ぎ立てるような、そんな雰囲気はどこにもない。男性というと、こういう穏やかな人もいるものか。繭子は、ちょっと驚いていた。

「こんな雨の中で、傘もささないで歩いているなんて、一寸おかしいといわれても仕方ありませんよ。そう言われないようにするためにも、傘を買ってきたらいかがですか。」

そういわれても、繭子は、その千円札を受け取ることができなかった。何だか怖いというか、そんな気がしてしまう。

「それでは、僕たちが代わりに買ってきてやるか。なんだかこの人、ボケっとしちゃってて、返答してくれないから。」

と、車いすの男性が、そういった。そうですねエ、と相手の男性もそういって、

「ちょっとここで待っててください。」

と言って、コンビニに入っていった。繭子はここで逃げてしまおうかと思ったが、なぜか足がすくんでしまって、逃げることはできなかった。それもやっぱり夫のせいなのだろうか。夫から逃げたら、笑いものになるというか、行き場がないという事は知っている。だから、夫から怒鳴られても、逃げないでいる。それが最善の策だと思っている。口で言ってもわからないからと言って、時々手を出してくることもあるけれど、逃げたりしたら、おしまいだと、私はいつも思っているのだった。本当に困っていたら逃げてしまう事も出来たはずなのに、そういう訳で繭子は、その場から逃げてしまうという事が、出来なかったのである。

「おい、買ってきたぞ。大きさはこれでいいか?ちょっと開いて確かめてくれ。」

不意にそういわれて、繭子はびくっとする。

すると、目の前に、一本のビニールの傘が現れた。傘の柄は女性らしくピンクになっていた。男性というものは、こういうところがあったんだろうか?

「ほら、これだよ。早く大きさ確かめてくれよ。」

と、その人に言われて、繭子は傘を受け取った。大きすぎず、小さすぎずちょうどいい大きさだった。「あ、有難うございます。」

とりあえず繭子はそういうことを言う。でも、傘の代金は、どうしようかと考えてしまう。

「一本、500円ですが、大した額じゃありませんから、代金は気にしないで結構ですよ。」

もう一人の男性がコンビニから出てきた。

「あの、お二人は、どちらの方なんでしょうか、お礼位しないと申し訳が立ちませんから。」

繭子は、申し訳なさそうに言った。

「僕たちは、このコンビニの近くに住んでいる、影山杉三と、僕の友達のジョチさん。あと、こいつが、僕の親友の正輔だ。僕の事は杉ちゃんと呼んでくれ、杉ちゃんと。よろしく頼むな。」

と、車いすの男性がにこやかに笑ってそういうことを言った。ジョチさんと呼ばれたもう一人の男性は、本名ではなく、正式には曾我と申しますと自己紹介した。

「そうですか。でも、この傘のお礼位はしなくちゃいけませんから、ご住所とかお伺いできませんでしょうか。」

と、繭子はもう一回言った。

「そして、私に会ったことは、誰にも言わないでいただきたいんです。」

「誰にも言わない?」

杉ちゃんは、そこを強調した。

「どういうことだ。まあ、誰にも言わないっていうか、誰かに話す必要もないけどさ。しかし、今日あったことを、誰にも言うなというやつは、珍しいな。ちょっと理由を話してみてくれないかな。」

杉ちゃんにそれを捕まったらおしまいだ。捕まった相手は、それに答えを出すまで付き合わなければならないという事である。

「なあ、どういうことだ?ちょっと教えてくれよ。僕、誰かに話すとかそういうことをたくらんでいるんじゃないよ。ただ、日常と違うことをいわれるとよ。僕は、理由を聞きたくなってしまうんだな。というのは、そういうことは、つらい思いというものが、隠れているからな。」

杉ちゃんが言っていることは、まさしく図星だった。それを口に出したら、どんなにいいだろう。そう思うけど、どうしてもそれを口に出して言えない。

「ほら、言っちまえよ。お前さんが、困っていることを隠しておけないタイプだってことは、誰が見てもわかるだろうよ。てか、人間は誰でもそうだよ。隠し通せる人間なんてどこにもいないよ。そう言うことは、口に出して言っちまったほうが、いいってもんだ。」

「杉ちゃん、もし、そういうことを言うんだったら、コンビニの前ではなくて、うちの店でしたらいかがですか。」

杉ちゃんがそういうと、ジョチさんが、そういった。繭子は、この二人に従うことにした。何だか、逆らったらどうなるかわからないという事はよく知っていたから、従わなければいけない気がしたのであった。繭子は店はどこにあるか聞くと、店は、100メートルもないと二人は笑って言った。それでは余計に、ついていかなければならないという気がしたのだった。店は、本当にコンビニの近くにあった。焼き肉屋ジンギスカアンという高級そうな看板を見て、繭子は、手の届かない高級な店に連れてこられたのは無いかと思ってしまった。

「さあどうぞ。」

ジョチさんは、店の中に彼女を案内した。まだ閉店時間になっていないので、店の客は、少なからずいた。でも、店のウエイトレスたちはちょっと、くすんだ顔をしていて、何かわけがあるのではないかと思われる人ばかりだった。

「さあどうぞ。」

ジョチさんが、繭子を、店の奥の席へ座らせた。丁度、ブスっとした顔つきのウエイトレスが、彼女の前にお茶をどうぞと置いた。

「おう、じゃあ、焼肉定食を頼む。あと、彼女に、カルビコースでいいかな。よろしく頼む。」

と、杉ちゃんが即答する。ちょっと待ってくださいと繭子はいおうとしたが、その前に、カルビコースと、焼き肉定食ですね、とウエイトレスは伝票に書き込んでしまったので、もう、変更はできないなと思った。

「それでは、暫くお待ちください。その間、ごゆっくりお過ごしください。」

ウエイトレスは、ここで初めてにこやかな顔をする。その顔は、心から嬉しい、という顔をしていて、なんだかこちらもうれしくなるのであった。

「よろしくお願いします。」

厨房に行くウエイトレスに、繭子はありがとうございます、というのだった。ここの代金は、僕が出しておくからな、と杉ちゃんが言っていたのを忘れていた。

すると、目の前に、小さなフェレットが、テーブルの上に乗った。小さなフェレットは、体を車のついた、かまぼこの板で支えてもらって移動しているのだった。

「こいつはな、名前を正輔と言って、僕が公園で拾ってきたのさ。元、野良フェレットだ。」

と、杉ちゃんが笑って言う。繭子は正輔をそっと見つめた。正輔は、左前脚がかけていた。残りの三本足で、彼は車輪付きのかまぼこ板を動かしていた。

「あの、今日の事ですけどね。ちょっとお尋ねしたいことがあるんですが。」

と、ジョチさんがそういうことを言いだした。繭子は何を聞かれるんだと一瞬ヒヤッとした。

「いいえ、僕たちは、あなたに悪いことは致しません。ただ、心配しているのです。そもそも、ずぶぬれのままで、道路を歩くなんて、一寸おかしいんじゃないかと誰が見ても、わかると思いますからね。」

まあ確かに、道路を濡れたまま歩くのは、一寸おかしい事にはおかしなことだ。それはきちんと話さなければならないと、思ってしまう。

「はじめは、そうです。私は、主人の親戚の家にお通夜に行ったんです。」

と、繭子はそれだけ言うが、その先はどうしても話せない。どうしたらいいのか、よくわからないというのが、正直な答えたった。

「それで、ご主人の車から、追い出されたんですか?」

と、ジョチさんがそう聞いた。

「それでは、一寸おかしいですね。なんで追い出されなければいけなかったんでしょうか。」

そういわれて、繭子はまた答えに困ってしまった。繭子が、声を出そうか出すまいか、一生懸命考えていると、

「ご主人、そういうことを時々するの?」

杉ちゃんが、お茶を飲みながらそういうことを言った。それをいわれて繭子は、また困った顔をした。

「ははあ、図星かあ。それならよ。誰か助けてくれるような人はいないのか。あ、そうか、ほかに相談できる人もないか。偉い人は、ちょっと費用が高くて行けないし、親戚とか家族はみんな忙しいし、お友達にもそういうことは、言えないかな。ま、誰にも言えないってなっちゃうのか。」

「杉ちゃん、人の事をそんなにべらべらと。」

ジョチさんは、そう杉ちゃんをけん制するが、まさしくその通りだったのだ。カウンセラーに相談しなければと思ったが、そういう人物に相談するには、御金がかかりすぎていけない。子供がいるわけでも無いし、親戚は、みんな自分の用事で忙しすぎて、相談したいと言っても、相談することはできない。一度、親戚に話したいことがあると持ち掛けたことがあるが、そういう事があるんなら、まず亭主に相談してからにしろ、と、言われてしまって、これは相談することもできないなと、思ってしまって、結局相談できなかった。学校の同級生も、みんな結婚して幸せに暮らしている人ばかりだから、こんな相談することは、絶対にできないだろうな、と思ってしまう。結局、誰にも言うことができないで、毎日を過ごしているのだった。

「まあ、仕方ないよなあ。日本にはなかなか、そういうことを、やってくれる公的な機関というものもないしねエ。相談できる人の方が、恵まれているかもしれないね。」

「そうですね、最近はあからさまに、SNSなんかに暴力を振るわれていることを、公開してしまう人もいるようですが。」

杉ちゃんとジョチさんが、そういうことを言うと、繭子は、

「違います。そんな事ありません。あたしが悪いんです。あたしが、ちゃんと家事をやらないとか、そういうことで怒られているだけですから。」

と、急いで訂正してしまった。暴力を振るわれているなんて、認めたくなかったのである。

「でもねえ、そういう事を、されているって、まず認めることが大事なんじゃないの。そして、どっか安全なところに逃げることだと思うけど。」

杉ちゃんの一言は、ちょっと厳しかった。

「そうですよ。もし、可能であれば、この店で働いてくれても結構ですよ。うち、住み込みで働いている人、かなりいますからね。中には、そういう理由でここにやってきた人もいました。その人は、今は別の人と再婚しましたけどね。」

ジョチさんは、実業家らしくそういうことを言った。それなら、暴力をふるう夫から、逃げるチャンスがあるという事なのだろうが、繭子はそれに飛びつくことは出来なかった。何か怖かったのだ。そういうことは、出来ないような気がしてしまうのだった。

「本当に、それでも僕たちはかまいませんからね。そういう事情がある人をうちで雇ったことはよくありますから、元夫から逃げる方法も、いくつか知っているつもりですし。」

「控えめな奴だなあ。そういう時は、危ないからすぐ逃げろと、でかい声で言ってやるべきじゃないのかな。お前さん、子どもはいないんだろ。それじゃあ、逃げられる可能性はまだあるよ。子どもがいると、そこでまた厄介なことになっちゃうってこともあるけど。」

杉ちゃんがそういった。確かに、繭子には子供はない。ほしくなかったわけではないけれど、いくら努力してもだめだったのだ。夫が、おかしくなってきたのもその時からだっけ。夫は、結構子ども好きな人だったから。

「今の時代、バツイチ何て何てことないよ。それよりも、お前さんらしい人生を生きるべきじゃないのか?そんなさ、変なことする旦那にびくびくして生きるよりもよ。そのほうがよほどいいんじゃないかと思うけど?仕事だったら、この店で働かしてもらえれば何とかなるだろ。この店の奴らはな、みんな訳ありの奴ばっかりだけど、みんな優しくていい奴ばっかりだ。きっと優しくかわいがってくれるよ。そこは保証してあげるさ。」

杉ちゃんが彼女をそう励ますが、それでも繭子はその通りにできないのだった。それよりも、そんなことを実行していたら、また新しいブラックホールに飲み込まれてしまいそうな気がした。

「はい、焼肉定食ね。あと、カルビコースのお客様はこちらです。」

ワゴンを押したチャガタイが、焼肉定食とサラダを持ってきた。

「さっきから、深刻な話して。その前に、ご飯を食べて、心を落ち着かせてから話したらどうなんだよ。そのほうが絶対、いい結果は出ると思うぞ。」

チャガタイは、杉ちゃんの前に焼肉定食のお盆を置き、繭子の前にサラダと、カルビ肉をたくさん置いたお皿を置いた。

「おう、すみませんね。それでは、ひとまず話は中断して、取り合えず食べような。いただきます!」

杉ちゃんは、焼き肉にかぶりついた。

その器の隣にいた正輔にチャガタイが、

「君はこれね。マー君。」

と、普通サイズのリンゴを正輔の前に置く。正輔はおいしそうにリンゴにかぶりついた。

「食欲旺盛でいいなあ。マー君は。ガンバのノロイを目指すと言っていたが、もうちょっとだね。」

チャガタイは、そういって正輔の背中をなでてやった。

「おい、お前さんも食べろよ。」

杉ちゃんに促されて、繭子もカルビ肉を一つとったが、全く食べる気にならなかった。今までカップラーメンばかり食べていたので、食べようという気になれなかったのである。それに、食事をするのは、実は危険な瞬間でもあった。夫の気に障ることをしゃべってしまわないか、びくびくしていたのだ。なぜ、夫婦二人で食事をしなければならないのだろうなんて、考えていたこともあったが、次第に、それも考えなくなってしまったような気がする。

「おい、食べんのか。まさか、横暴な旦那のせいで食べる気がなくなっちゃたんじゃないかな?それじゃあ、結構重症だぜ。」

また図星だ。杉ちゃんという人はあたしの考えていることをどうしてそう、超能力者みたいにわかってしまうんだろうか。もう私は、そんな事を言われても、対処法がないって、わかっているのに。

「お前さんさ、もう何も解決法がないから、一人で耐えて生きていくしかないって、あきらめてないか?だけど、人間なんてな、一人で耐えていくことなんてできやしないのさ。必ず誰かに何かしてもらわないと、生きていけないこともあるんだよ。それは、何にも恥ずかしいことじゃないのさ。ほら、こいつを見ろ。」

杉ちゃんは、正輔を顎で示した。チャガタイの渡したリンゴは、おそらく陸奥林檎である。リンゴの色から判断すれば、それがよくわかった。正輔は、一生懸命一本しかない前足でリンゴを支えることはできないから、チャガタイに体を支えてもらって、リンゴにかじりつくように食べているのだ。一緒にいたチャガタイが、次はこっちか、なんて声をかけながら、リンゴを動かして、小さなフェレットがリンゴを食べられるようにしてやっているのだった。

「ほらよ。こいつだってな。リンゴを食べるのに、自分の力ではできないんだよ。だから、こうして誰かにリンゴを支えてもらっている。でも、リンゴを食べなきゃ行けないのは分かるだろ。こういうあたり前のことだって、誰かに手伝ってもらわなければならない奴もいるんだ。お前さんも、素直に苦しいなら苦しいと言ってみな。かならず何か得られるよ。でも、なにも言わなかったら、そのことさえも得られないだろうがな。」

杉ちゃんはそういって、焼き肉をまたかぶりついた。

「そうよねえ、、、。」

繭子は考えながら、一生懸命リンゴを食べている、小さなフェレットを見つめた。確かにそれは、ある意味では感動的かも知れなかった。まるで、小さなフェレットは、大きなリンゴに挑戦しているようにも見えるのだ。大きなリンゴは、もしかしたら、私がしなければならないことを象徴しているのかも知れなかった。そのリンゴを食べるという事は、今の問題を乗り越えるという事かも知れない。そして、リンゴを食べるのに、人の手を借りている。確かに、三本足では、リンゴにかじりつくことはできないかもしれない。でも、そうしなければリンゴを食べられないのであれば、そうしてもらうしかないかもしれない。

「ほらよ、だから、もう一歩、踏み出してみないか。そうしなければお前さんも、リンゴを食べることはできないぜ。」

そうよね。あたしもそうしなければならないわ。繭子の頭の中でそんな声が聞こえた。このまま、夫と暮らしていては、もう怖くてたまらないという恐怖に苛まされる生活が続くことになるのだ。そうなったら、若しかしたら、自分もおかしく成ってしまうかもしれない。ここで働いてよいとこの人たちが言っているのであれば、それに従った方がいいかもしれない。

「一度しかない人生だ。もっと自分の人生を大事にしろ。それに、そういう旦那の下に行ったからって、人生すべて終わりだと思っては行けないさ。ただ、そういう旦那に会っちゃっただけだ。それだけだ、お前さんの人生は、すべて終わりという訳ではないんだ。」

杉ちゃんにそういわれて、繭子は、杉ちゃんたちの話に乗ってみることにした。

「どうですか。ご主人と縁を切るために、うちで働いてみませんか?」

と、ジョチさんがもう一回いうと、繭子は、

「わかりました。お願いします。」

と頭を下げた。その間にも、正輔は、リンゴをチャガタイさんに転がしてもらいながら、一生懸命それを食べていたのであった。リンゴは、先ほどよりも、一寸小さくなっていた。



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リンゴを食べる三本足のフェレット 増田朋美 @masubuchi4996

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