第10話 悲しみと怒り

 私は言った勇気を持って…………。


 私は目を瞑った不安を拭い去るために……。


「……、すまないが断るよ恵美えみ


「え……」


「だって面倒くさいから……」


 分かっていた。


 なぜならこの言葉を恐れて、今まで告白できなかったのだから。


 けれども、いざ言われると耐えきれないものがあった。


 だからだろうか、自分の目から出る雫はとても冷たかった。


「じゃあな……」


「!、ま待っ……」


 私はどうしてか待ってという言葉すら言えず、泣くことしかできなかったのである。



 〜 桜木春花おうぎはるか 〜


「うわーん!また失敗しちゃったよ〜」


 逃げて家へ帰ってきた私は、自室で失敗を嘆いていた。


 何であの時逃げてしまったのだろうか。


 無論自分でも分かっている。


 何を話していたのかを聞くのが怖かったのだ。


 乙女の感が恋と告白に関することだと、佐藤さとうさんの表情と真剣な眼差しでそう告げていた。


「あの後どうなったんだろうか」


 不安で今にも心が重かったが、こればかりは運しか無かった。


 だって幼馴染とか反則じゃない?一緒にいた時間からしてもう勝ち目ないじゃん!。


 でも気になるのも事実なんだよな〜。


 もしかしたら感が外れて違う案件だったりするかもしれないし、明日聞いてみるか。


「よし明日聞いてみよう!」



 〜 次の日 〜


 学校の昼休みになった時間に私は階段を登り、佐藤さとうさんを訪ねに行った。


「すいません、佐藤いますか?」

 

「え?私?」


「そうそうって……」


 その顔を見ると目にはクマができており、泣いた時に目を手でこすったような赤い跡が目の下にできていた。


 もう十分に分かってしまったのだが……。


 今呼んだのは気まずかった。


 幼馴染という立場でさえここまでやられるのかと。


「ここじゃなんですので、他のところで話しませんか?」


「は、はい……」


 私は佐藤さとうさんを自分のクラスから近い階段付近で話しましょうと言い、場所を変えた。


「すいません。昨日の放課後、図書館で話しているのを聞いてしまいました」


「え、」


「佐藤さんも好きなんですよね、倒堂君のこと……」


「はい。でも……面倒くさいと振られてしまいました。あはは」


 その笑顔はとても苦しそうな笑顔だった。


 それはそうだろう、気持ちを伝えるのがどれだけ勇気のいることか。


 それを面倒くさいという言い訳にも聞こえる言葉でその人の気持ちを蔑ろにしたのだから。


 私はその倒堂とうどうの返事の仕方を聞き怒りがこみ上げてきたのである。





























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