雨の誘惑

この灰色雲に覆われた空とわたしは

まるで我慢比べをしているようだ

降りそうで降らない雨

それでもきっとこの勝負は

わたしの勝ち


梅雨空に憎まれ口を叩いたりする

結局、降るのだろう?

いつだってそうだ

ちゃんと泣くのだろう?

しずくは地面を濡らすのだろう?


雨よ


どうせ降るなら

静かに降ってくれ

これみよがしに泣かないでくれ

わたしも泣きたくなってくるから

涙なんてものは枯れてしまったのに


空は今にも降り出しそうに

わたしを誘惑している

泣いてしまえばいい、と


何を知るというのだ

泣けるものなら泣いているのに

泣けない孤独を知りもしないで


空よ


今にも降り出しそうだったのに

雲の合間から一筋の光


卑怯だよ


そんな風に

わたしを泣かせようとするのは


夕暮れ時の陽射しが

レースのカーテンを

柔らかく照らしている

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