グラデーション

思えばもっと若い頃は

白にも色々な白があり

黒にも色々な黒があることなんて

考えもせずに

白は、ただ白で

黒は、ただ黒で

見えていて知っているつもりで

とても小さく狭い世界の中


今だってそんなに

何もかもを知っているはずもなく

それは相変わらずだけど

少なくとも世界には

まだ見ぬ無数の色があることだけは

わかるようになった

気づくのに時間は

随分とかかってしまったけど


未だに見つけきれない色ばかりで

見つからないまま終わる色の方が

きっと多いのだろうけど

それでも知らなかったよりは

知ることができただけでも良かった

こんな夏のはじめの夕暮れに

少しずつ変わっていく

空のグラデーションを見つめながら思う



過去の想い出や喜びや哀しみ

この心に溢れてくるものを

キッパリと仕分けることなどできようか

例えようもなく絡み合う感情、胸の疼き


懐かしさが、あの切なささえも

いつしかいとしさでくるんでしまうように


人生の黄昏時のグラデーションの中

わたしの今日がこうして

また暮れていこうとしている

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