高身長男子
まどろんだような声。
決して大きな声ではなかったのに、この場の興味を全て攫っていった。クラス中の視線はたった一言で奪われた。
1人の男によって
「あれ、皆、どうしたの?」
どうやら机に突っ伏していたらしい男は、もぞもぞと動き、自身が注目の的である事に小首を傾げていた。
不思議そうな顔はまだ幼さが残り、正直、身長と顔がマッチしていない。ただ座っているだけでも分かる背の高さ。他の生徒の頭2つ分くらい飛び抜けていらっしゃる
高身長爆ぜろ
胴長なのか、身長が高いからなのか、
答えは残念ながら後半だ。じっちゃんの名にかけて
あぁあああ、いいなぁ身長ある人は。借金してもいいから、買い取りたい
と、かなり本気で思っていた私は恨み辛みで見知らぬ男を睨め付けて、その異常で無駄に整いまくっている顔面に気が付いた。
スッと通る高い鼻、薄い唇に、透き通るエメラルドグリーンの
まだ幼さが残る顔、けれど亜麻色の髪はそれに反して大人へと彼を魅せていた–––––––
昔、おばーちゃんに聞いた事がある
緑の瞳は、
「あ、もしかして、転校生?よろし、」
『緑内障なら病院行って手術した方がいいよ!?』
緑の瞳は緑内障。
視界が見えずらくなる、病気。老化に伴い起きてしまう、目の病。白内障と緑内障。
緑内障は手術がある、けど、治る確率って、
私に手を差し出し、自己紹介らしきものを口にしていたが勿論私の耳に届いている訳もなく、
その手を両手で包み、説得を試みた。
『目が見えなくなったら不便だし、手術は怖いかもだけど、』
「え、いや、あの、」
『手術する前に麻酔するから、痛いのは麻酔だけで、なんなら誰かに付き添ってもらったほうが、』
「ちょ、待って、まっ」
彼は今、どれくらい見えていないのだろうか
これだけ緑がかっているのだ、もうほとんど見えてない?日常生活は?学校生活は?いままで誰も声を掛ける人はいなかったの?
考えるだけでもゾッとする。私は知ってる、視力が下がる事、見えにくい事の恐怖
休みの時に8時間以上ゲームして、エロビ見て、運転の更新免許日。視力検査がある、あの恐怖を
なんなら一年に1回ある健康診断の視力検査も最悪で、眼科に行くことを勧められた日には難聴を装いたい衝動に駆られてしまう。あの眼科の待ち時間はただの苦痛でしかない。
今、思い出すだけでも泣けてくる。いや、涙が実際出ている。
彼は不安で、ずっと葛藤してたのでは?そう思うと遣る瀬無さが湧いて、瞳が濡れた。
「––––––––ぶはっ‥‥あっ、ははっ」
腐女子ふんとうきっ ひなた @mhinata06
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