1–s

どうもどうも脳内腐りまくって腐臭を撒き散らしている、どこにでもいる普通の学生、美音だよー!


ほらほらテンション上げて、せーので私の名前を呼んでみよっ。せーのっ、



『初めまして、今日から転校してきた美音です』

生まれてこの方、転校なんてなかった私軽くパニック状態。自己紹介で何言うかも纏まらない中、担任がしれっと教室の中に入り、後を追えばいいのか、合図があるまで廊下で待てばいいのかそれすらも分からなかった私は、頭の中が真っ白になっていた。


そんな私の事など知ってか知らずか、教室に入った担任が廊下に顔を出し「入らねえのか」などとほざいたものだから、脳内で先生のアヘ顔を想像してやった、ざまぁみろ



てな訳で今日から私、花咲 美音は1–sの生徒になりました。1–sの1は『1年生』って意味らしい。


おぉおお、sクラス!なんかカッコいい


クラスに入って驚いた事、それはクラスメイトの人数だった。1クラス、40人。何それマンモス校!?って、ツッコミを入れたくなるのは仕方ない。私が居た高校は1クラス20人だったし。


しかもクラスは7組まであるという。だから校舎が無駄にデカイのか、と納得。


「んじゃ、空いてる席に座れ」


いや待て、扱い雑。もっとフォローとかさないの?ないんですね、ないんですか。まぁ、高校生だもんね。分からなかったら周りに聞け、って事ですか


あぁ、でもね、


『あの、先生?空席が3つあるんですけど』


と言うか、1つは私の席だとして‥‥あとの2人は何処へ。


「あー‥‥お前の席は真ん中な」


『あ、はい』




窓側の後ろから二番目の席、どうやらあそこが私の席になるらしい。欲を言うなら一番後ろが良かったなぁ。


私の前と後ろは空席。鞄だけが机の横に掛かっている、と言うことは。


つまりつまりつまり、デキテル。もう任せて、私の脳内に掛かればお手の物。関係ない人から全員、そういう世界へ誘います。


ニヤけそうな顔を隠すため、口元に手を当てながら席へ向かおうと一歩踏み出した––––––




「おい」


『ふぇ?』


一歩、踏み出した筈だった。


不意に掴まれた腕。振り返ると、窓から入ってきた風で前髪がサラリと揺れ。なんとも表現しにくい、苦虫を噛み潰した様な顔をした先生が視界に入り、


無意識にも息を飲む。けれど先生は頭を横に振り、


「いや、なんでもない、教科書は誰かに見せてもらえ」



淡々とした声でそう告げた。


その声が掠れていた事に、私は気付く事などなく自分の席へと向かった。

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