ユズさんが創設者


《ここは貴女が知っている世界。よくある異世界転生とかじゃなくてね、うーんっと、現代召喚したの》


私の肩を椅子がわりに腰掛ける妖精–ナノは、現状をゆっくりとした口調で話してくれた。


『じゃあ私‥‥ちゃんと生きてて、よくある転生ものじゃないって事?』


《ピンポンピンポン大正解》


『あの‥ナノ、ちゃん?なんで私、召喚されたの?』



落ち着きを取り戻せたのはナノが言う『召喚した』との言葉。私がいる世界じゃ、何故か事故死した後の転生ものがやたらと流行っていた


だからかな、割とすんなり理解は出来たけど不安は大きくてナノに『達也は?達也はどこ?』と聞いてしまった。けれどナノが言うには、この世界に来たのは私だけらしい


召喚って言ったら足元に魔法陣が現れると思っていた私は、瞬きの間に召喚され違和感しかなく、ついついナノに質問責め。そんな私に嫌な顔せず、ナノは1つ1つ教えてくれる


出来た妖精さんだ


《うーん?ナノ、よく分かんないけど頼まれたの》


『頼まれた?』


《うんっ!ここの創設者さまぁ》



えっへん、と言いたげに胸を逸らすナノ。誇らしげな顔も可愛らしい。妖精って、ナノみたいに皆可愛いのかな


《あのねっ、ナノの、ナノたちの創設者さまでね?すっごくすっごく優しくて、それでね?ゆってたの》


『?』


《–––いつも有難うね、これは私からのお礼だよって》




え、っと声にはならず息が溢れた。

ドキドキと鼓動が早くなる、心臓がキュと痛いのは‥‥気のせいじゃない


『それは、誰が言ってたの?』


声が微かに揺れた。不安、動揺、緊張、焦燥。

多分全部の感情がぐちゃぐちゃに混ざった状態。


喉が乾くな、


そう思う私の頬には汗が一雫、流れた。


《この世界を作った緒方はユズさまだよ》


ナノが言い終わったと同時に、さぁっと優しい風が身体を撫でていく。私の動揺、不安を攫って消えて行くような、そんな穏やかな風。



『‥‥ぱ』


《ぱ?》


『パンツが食い込んだ、って、いや、じゃなくてユズさまってあのユズさん?え?えぇ?』


突っ込みどころが満載過ぎて頭が追い付かない。


取り敢えず買いだめしてるエロ本読みたいから1回家に帰っていいですか。だってだってだってぇ、今日読もうと溜め込んでたんだよっ


あぁ、でもユズさんが作り出した世界も貴重よね


この際、夢でも妄想でもなんでもいい。ただね、ちゃんとここにまた来るから、漫画と良くを言うならば携帯を取りにUターンしてよき?


って、ぁあああああ!?携帯っ!


ちょい待て、マジで待て。今日は何の日!?ユズさんのゲーム配信の日だよっ!!!

ついさっきまで楽しみにしてたゲーム公開の日


『ナノちゃん、一生のお願いBL本と携帯取りに帰らして』


《びー‥え、る?》



コテン、と首を傾げるナノ。一つ一つの動作が一々可愛い。そりゃそうか、ユズさんが手がけた世界なら、こんなにナノが可愛いのも仕方ない。


《ナノ良く分かんないけど、それ、必要?ユズさまが作り上げた世界、その中で皆、生きてる》


『つまりそれって、』




ナノに言われて、ハッとする。自分でも気づいていなかったが、少しばかりまだ動揺していて見落としていた事に気がついた。


そう、ここはユズさんの世界、


つまり、それって––––––––。


この世界はBL世界、と言うわけだ。何それ最高

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