え?え?ええええ!?

達也から誘われて、明日何か予定あったっけ?なんて呑気に考えながら何回か瞬きして–––––


息が止まった。


『っっっ!?』


頭が真っ白になる、とはこの事か。と、客観的に分析してみるもただの現実逃避もいいところ。

おかしいな、私、今の今まで自室のベッドでゴロゴロしてて、BLゲームの配信待ちで、達也が部屋に入ってきて。それで、それで、


なんで私、制服姿で外にいるの‥‥?


UFOキャッチャーでとったお気に入りの抱き枕や、ベッド。ふんぱつして買った動物の柄のカーテンや、丸い小さなテーブル。本棚は中古で買って、前列には参考書。その後ろはBL本。


夢と希望と萌えが詰まった私の空間、

その見慣れた空間、私の部屋が‥‥ない。うんん、部屋だけじゃない、家が、ない。


ここは––––––‥‥どこ


《召喚成功!ナノ偉い》


唐突に聞こえた澄んだ声。決して大きな声じゃないのに聴きやすい、可愛らしい声。


アニメとかの声優さん、みたいな


って、‥‥ショウカン?なにそれ、あの召喚?いやいや、まさか。どんだけ厨二病拗らしてんのさ私


まぁ、10代では確かに『右目が疼くぜ』みたいなセリフ言ったよ。言ったけど、病院にも行ったよ。ただの花粉症だったわ


《ねぇねぇ、あのねお願いがあるの》


なんなら親に『ついでに脳外科も逝く?』なんて言われたけど、親切丁寧にお断りした。なんでだろうね、パープル世界の逝くならエロく感じれるのに、親が言う逝くは成仏できそうで嫌だな


しかも、真面目に目が痛くて2度目に病院行ったら、結膜炎になっていて簡単に『目が疼くぜ』なんて言えなくなった。今思えば黒歴史。


《ねぇ?聞いてるー?ナノの声聞こえる?》


不思議だよね、昔はかっこよく感じて使ってた言葉

今聞き返すとただただ痛い、と思えるなんて。


《ねぇっっっってばー!!!!》


『うおっふ‥‥耳いたぁ』


耳の横で大声を出された、と説明したら想像つくだろうか?間近でリコーダー吹いたらあかん、って先生良く言ってたけどその意味が良く分かった


耳いたいわ、真面目に


至近距離と思われる声。けれど、だ。どんなに静かに近寄ったとしてもだ。耳元に顔を近づけられれば嫌でも人の気配に気付く訳で。


つまり何が言いたいかといいますと、



『悪霊退散』


なんかちっこいのが浮いてる。親指サイズの何か、だ。え?何これなにこれナニコレェ!?


《ナノの事、無視してた癖に次は悪霊扱いするなんて酷いよぉ》


『しゃ、‥‥喋った、』


両手を腰に当て、怒ってますポーズを取る女の子

睨みつけているのか、上目遣いなのか分からない態度に、不覚にもキュンときた


あ、ヤバイ、ユズさんの次にかわゆい


女の子が動くたび、着ている淡いピンクのワンピースが揺れる。袖には白のレースがふんだんにあしらわれており、愛らしさを更に引き立てている。


まるでこの世の者じゃない、みたい


《初めまして、私はナノ。貴女を召喚した妖精です》




恭しくも頭を下げる妖精さん。


その動きに合わせて、煌めく金色の髪が揺れた。


どうやら私、妖精さんに召喚されちゃった‥‥みたいです。拝啓お母様、やはりわたくし脳外科に御厄介した方がいいかもしれません


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る