第4話 魔王様の初仕事

「みーちゃん」




「みーちゃんどこですか」




我達は必死に呼びかける。


どこにいるかもわからない猫相手に。




我達は今、冒険者の初仕事の取り組んでいる。


本当はダンジョンにでも行って魔物でも狩って、手っ取り早く


弁償したいところだがそうもいかない。




なぜかというと我たちは鉛等級という冒険者最下位等級だからだ




まず冒険者等級は上から金剛、白金、金、銀、鋼、鉄、銅、鉛の八等級だ。


上に上がるにはレベルと実績の両方が必要になってくる。


我達のレベルは白金昇級に必要なレベル70以上という要件を満たしているが、


実績は文字通りゼロなので上には上がれないのだ。




仕方がないので鉛等級でも受けられる依頼を探してみたらひどいもだった。


町内の掃除だったり、ビラ配りだったり、今やってるペット捜索だったり。


全部が全部しょぼいものばかりだ。




その上、鉛等級の冒険者はダンジョン進入禁止だし、一日一回しか依頼は受けられない。


全くひどいものだ。仕方がないので一番報酬がいい猫探しをすることになった。


まあ、いいと言ってもたかが知れている。前金なしで成功報酬110G


まったくもってふざけている。毎日やっても弁償金の1万Gには届かないでないか




「みーちゃん」




探している猫の特徴は白色の猫。目の部分だけ眼帯のように毛が黒くなっているらしい。






めんどくさいはっきり言って。と言ってもやるしかない。


次の銅等級に上がるにはレベル15以上で成功依頼三件以上だ。




三件か遠いな。少なくても三日はしょぼい依頼をこなすしかないのだ。






「みーちゃん」




「なかなか見つかりませんね」




「すまないシエル付き合ってもらって」




「構いませんよ」




我はなんて最低なんだろうか下らないプライドで


水晶を壊して負債を背負ってしまうなって。


その上シエルに負担をかけてしまうなんて魔王失格だ。




「しかしこんな広い街で猫一匹探すのなんて無理だろう」




「まあそうですね私たちだけなら、でもご安心を精霊たちにも探してもらっていますので」






精霊術。精霊の力を借りることによって特殊な術を行使したり


今みたいに探索を手伝ってもらったりできるのだ。




この精霊術はエルフしか使えない。エルフは精霊と人間の魂が混じった


結果生まれたのがエルフだ。だからなのかエルフは精霊が見えて声が聞こえる。


シエルは8割エルフなのでこの術を使えるのだ。




しばらくするとボヤっとした光がシエルに集まってくる。




「ほう」




精霊にもちゃんとした姿があるが精霊術を使えない人には我みたいに


ただの光にしか見えない。




「なるほど教会の方にいたんですね。なるほど」




それに声だって俺には聞こえない。傍から見ればひとりごとだ。




「だそうです」




「うむ教会か・・・・・・・仕方があるまい」






我達は教会に向かうことにした。








◇サンディ教会






俺は教会が嫌だ。理由は簡単だ我が魔人だからだ。




魔人族というのは悪魔と人間の魂が混じった結果生まれてきたといわれている。


悪魔は邪悪なる存在だ。教会は邪悪なるものを寄せ付けない。




だから我のような魔人が教会に入ると気分が悪くなる。


はっきり言って入りたくない。






「では行きましょうレクトル様」




「う、うむ」




シエルはほぼエルフなので気分が悪くなることはないだろう。




教会の敷地内に入ると汗が噴き出てくる。


それだけじゃない鼓動も早くなる。庭に入っただけでこれである。


できれば猫は外にいてほしいものだ。




「そうですか。裏の方いるのですねふむふむ」




シエルが精霊と話している。どうやら建物の中にはいないようだ。




「どうだった?」




「はい建物の裏手で寝ているそうです」




「なるほどでは二手に分かれて挟み撃ちにするか」




「そうですね私は右から行きますのでお願いします」






教会は高い塀でで囲まれている。建物の裏側となると道幅も狭く


人が一人、何とか通れる程の隙間しかない。


挟み撃ちにすれば問題なく捕まることだろう。




「くっ狭いな」




裏側に回り込むまで道は体を横にして何とか通れる程狭い。


衣服を外壁と塀にこすりながら何とか前に進む。




「うお??!」




蜘蛛の巣が顔にかかる。本当に最悪だ。




蜘蛛の巣まみれになりながら何とか突破した。




「やっとか」




我が出るとシエルの姿はまだ見えない。と思ったら


塀に上にシエルの姿があった。




そうかシエルは塀の上を歩いてきたのだな。俺もそうすればよかった。




で、目標の猫は俺の苦労も知らないで気持ちよさそうに寝ていた。


特徴も一致するし間違いないようだ。




シエルが塀から飛び降りて手を振っていた。


我もそれを見て振り返す。




「ふん大人しく捕まるのだな」




シエルが反対側からにじり寄ってくるのを見て、俺も足を進めた。




「にゃ~」




足を進めてすぐに猫が起きだした。


やばい、めんどくさいことになった。猫は俊敏だ捕まえるのは困難だ。




「みーちゃん」




そう呼びながら我はにじり寄る。一歩一歩慎重によっていく。


頼むぞ逃げるなよみーちゃん。




そして遂に猫を確保した。やったぜ。




「よーしみーちゃん」




「やりましたね!」




あらかじめ用意してあった籠にみーちゃんを入れようとした時




「にゃああああ!」




我の手を引っ搔く




「うお??!」




我はうっかり手を放してしまう。そして猫が逃げていく。




やばい、これではまためんどくさいことになる。


それにまったく俺様が役に立ってないではないか、それだけは避けなくては。




「クロックダウン」




我が指をパッチンとならすとその術が発動する。


この術は我以外の時間を五秒間だけ五分の一に減速させることができる上級魔法だ。




猫がゆっくりゆっくり逃げていく。我はその猫の体をやさしく抱える。


我は今五倍速で動いているに等しい。




猫は抵抗する間も無く籠に入れられる。


そして籠を閉め終わった瞬間、世界は再び元の時間を歩みだした。




「捕まえたぞシエル」




「流石です魔王様!!」




こうして我たちは猫を元の持ち主に渡し、ギルドに戻って成功報酬をもらったのだった。






本日収入110G 総収入-9,890G

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追放魔王様は冒険者となり這い上がる~無一文の魔王は億万長者を目指す~ パーマ太郎 @pamataro

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