第△話 進め スウィート・ハート!
県立の中等学園では、秋の中頃に毎年、二年生が一泊二日の林間学校を体験する。
二年A組のナナとマリカも、もちろんこのイベントに参加していた。
早朝に学校へと集合して、バスで県境の山の中へ。下車した地点から、県が所有する宿泊施設へと、お弁当タイムを挟んで山道を散策。
特に女子はヘトヘトになりながら、夕方前に施設へと到着し、夕食も済んで、今は女子たちの入浴タイムであった。
広い浴室なので、女性教師たちや二年生の女子たちが、みんなで入浴。
ナナとマリナも裸になって、先生や友達とみんなで、背中の流しっこを楽しんだりした。
平均よりも恵まれた成長具合のナナと、女子たちが羨望の眼差しで見つめるマリカの起伏を魅せるボディラインが、石鹸の泡で磨かれている。
隣では、クラスメイトで新聞部の聖が眼鏡を外し、スレンダーで均整の取れた綺麗なボディを、泡洗浄していた。
「ふぅ…今日は疲れたなー」
「でもでも、秋の山って紅葉も綺麗で、空気もすっごく美味しいですよね~」
そんな会話をみんなで楽しんでいると、聖が湯に浸かりながら、何か考え事をしている様子。
「聖さ~ん。どうかしましたか~?」
「あ、ナナ。う~ん…実はね、新聞部として、スウィート・ハートの正体を追っているのよ。すっごい特ダネ! まさにスクープだわ!」
「「えっ!?」」
思わずハモってしまう、ナナとマリカ。
「二人はいったい誰なのかしら? ね、心当たりとかない?」
「「えぇ…ええと…あはは」」
つい笑ってごまかす二人だ。
二年生になって同じクラスになった頃、お互いに顔も知らなかった、半年ほど前。
輝き空飛ぶプリンとシフォンケーキに導かれたナナとマリカは、放課後の校舎裏で、ほとんどの初対面。
と、二人の目の前に、ホールケーキを被ったような姿の、二頭身の妖精が出現。
身長二メートルを超えるその妖精は、この世界の危機を知らせに来た第八次元の異次元生命体で、二人に不思議な変身アイテム「スウィート・首輪」を授けて去った。
お互いをよく知らなかった二人。異次元帝国ダーク・スマイルが侵略してきた最初の頃は、喧嘩もしたし、それによる危機も、たくさんあった。
あれから約半年、根が優しい二人はお互いを解り合い、助け合いながら、今では共に戦う仲間以上の、無二の親友同士である。
そして目立つことを好まない二人だから、スウィート・ハートの正体は、二人だけの、絶対の秘密。
「…なんだか、ずっと昔みたいな気がするな…」
「ですよねですよね~。えへへ」
そんな事を思い出して笑っていたら、裏庭でゴオゴオと、大きな物音がした。
「なんだ!? だ、男子の覗きっ?」
「えええっ、えええっ!?」
女子たちの間に、羞恥の緊張が走る。
その時、裏庭では男子の覗き以上の危険が、訪れていた。
数分だけ前の裏庭–。
宿泊施設の庭先に、大きな湖があった。
というか、そもそも施設が湖畔に建てられている。
月が映る湖の、五メートル程の上空に、ダーク・スマイルの幹部「アゲカラー」が浮遊していた。
身長が一メートル半ほどの、太った燕尾スーツ姿の幹部は、鶏みたいな顔の嘴を歪に歪ませ、悪事を企む。
学生たちが宿泊している施設の整った外観が、アゲカラーの美的センスには面白くない様子だ。
「うむ…この不細工な掘立小屋に集められている人間どものガキを、総統様の奴隷として持ち帰りますコケ」
懐からダーク・スマイル・ワッペンを取り出すと、湖の水面へと落として貼り付け、闇の魔法を発動させた。
「出でよコケ! ダーク・ビースト!」
ゴオゴオと濁流音を響かせながら、湖の水が盛大に渦巻いて、全高十メートルほどの、巨大な竜巻の怪物となる。
「ダーク・ビースト タツマーキ! あの薄汚い施設を破壊しなさいコケ!」
「タツマーキーーー!」
轟音を響かせながら、湖の水が竜巻で巻き上げられてゆく。
タツマーキの腹部から施設へ向けて、莫大な水流が撃ち放たれた。
–ドドドドドオオオっ!
濁流が激しく打ち付けられると、施設の壁がアっという間に崩壊。
浴場の壁が破壊をされると、入浴タイムの女性教師や女子たちが全裸のまま、屋外へと流し出された。
「「きゃああっ!」」
凄まじい破壊音と衝撃で、驚いた教師たちや男子たちが、慌てて出てくる。
「何だ何だ!?」
「わあっ、先生たちや女子たちが全員、裸で流されて来たぞっ!」
「「「いやあああっ!」」」
男子たちの目の前で、女性教師たちや女子たちが、裸身のまま流出されてきた。
聖も裸で驚きながら、記者魂で周囲をキョロキョロ。
「何があったの、スクープっ!?」
「い、一体なになにぃ!? ああっ!」
裸のナナが気づいて指さした先には、ダーク・スマイルの幹部アゲカラーと、ダーク・ビーストの姿が。
「マリカちゃん、あれですあれです!」
「あ、あいつは、ダーク・スマイルの幹部 アゲカラー!」
全裸のマリカも、敵の姿を見とめた。
「マリカちゃんマリカちゃん!」
「うん!」
頷き合うと、二人は急いでバスタオルを手にして立ち上がり、施設の玄関側へと裸のまま急いで走る。
周囲に誰もいない事を確かめると、手の中に、変身アイテム「スウィート・首輪」を出現させて、首に巻いて変身コード。
「「スウィート・デコレーション!」」
裸身の二人が虹色の光に包まれて、手にしていたバスタオルが光の粒子へと分解される。
虹の光に照らされる、少女たちの綺麗な裸。
光の粒が、ブーツやグローブ、ティアラとなって、裸体に装着。
ティアラにそれぞれのスウィート・ジュエルが出現すると、最後に裸の体へと、ミニスカートのドレスが、ボディラインにピッタリフィットで装着をされて、変身完了。
ドレスは、破壊されると新しい姿へと変化するため、以前とは違うデザインの二人だ。
施設の屋根の上で、虹色の光が消滅をすると、そこには二人の変身少女が立ち並ぶ。
「ピンクのドキドキ スウィート・プティン!」
「碧いトキメキ スウィート・シフォン!」
「「La少女 スウィート・ハート!」」
名乗りとポーズをピシっと決める、二人の少女。
正義の少女たちの姿に、教師たちや生徒たちはみな歓声を上げて、悪の幹部は苦々しい表情だ。
「うおおっ、スウィート・ハートだっ!」
「みんなを護ってくれぇ、スウィート・ハートっ!」
施設内へと逃げ込む裸女子たちの中で、聖だけは、変身ヒロインたちの姿を目に焼き付ける。
「あの二人、どこかで会った気がするのに…! あああっ、額のジュエルが気になって、顔が覚えられないわ!」
スレンダーな裸のまま、悩乱する新聞部員だった。
「コケっ、またぞろ現れましたねコケ! 憎き小娘どもコケっ! 喰らいなさいコケっ、ガードキャンセル光線コケっ!」
幹部の両手から放たれた黒い光線が、スウィート・ハートのボディにヒット。
「「きゃあぁっ!」」
防御の要であるドレスを破壊された二人は、ティアラと首輪とブーツと手袋だけを残した、裸にされてしまう。
「ド、ドレスが…!」
「ああ、ああっ!」
慌てて両腕で裸身をガードすると、戦闘の構えが解かれてしまう。
二人のピンチに、男子生徒たちも焦燥させられる。
「ああ、見ろ! スウィート・ハートのドレスが破壊されて、裸だぞっ!」
「スウィート・ハートが裸にされて、防御力が無くなってしまったぞっ!」
「スウィート・ハートが裸にされて、防御力が無くなってピンチだあっ!」
防御力を奪われた二人も、強い危機感に包まれていた。
「こっ、これでは防御が…!」
「シフォン、一気に勝負勝負しかないです!」
二人は頷き合うと、タツマーキへ向かって裸で跳躍。
「「スウィート・ダブルパーーンチっ!」」
裸身を捻って拳を突き出した、二人の豊乳と巨乳が、たぷる、と揺れる。
「無駄ですコケっ! タツマーキっ!」
「タツマーキーーーっ!」
しかし渾身の一撃は、竜巻怪物に届く前に、放たれた濁流によって無効化されてしまった。
裸の二人が濁流に押し返され、ずぶ濡れになって、男子たちへと吹き飛ばされる。
「「きゃあああっ!」」
「は、裸のスウィート・ハートが、びしょ濡れで弾き飛ばさたぞぉっ!」
「裸で弾き飛ばされたびしょ濡れのスウィート・ハートを護るんだあっ!」
男子たちが団結をして、弾かれた二人の落下予測地点へと集結。
「「「せいいっ!」」」
みんなで一斉に両手を掲げると、ずぶ濡れになった裸のスウィート・ハートを柔らかく受け止めた。
男子たちの多数な手が、ブティンの豊乳や柔らかウェストや丸いヒップを、シフォンの巨乳や大きなお尻やモチモチの内腿を、シッカリと受け止める。
「「「大丈夫か、裸でずぶ濡れのスウィート・ハート!?」」」
「み、みんな…」
「さ、支えてくれて…」
同級生の男子たちみんなが、身を挺して両手を伸ばして、二人を守ってくれた。
そんな男子たちの心が、光の粒となって、ジュエルに集まってゆく。
「みんなの…」
「思いが…」
力と勇気が湧き上がってくると、ずぶ濡れな二人の裸身が清らかにに輝く。
男子たちの手から優しい跳躍で降り立つと、二人はタツマーキに向かって、必殺の構え。
背中合わせになって後ろで手を取り合って、もう一方の手の平を広げて掲げる。
「ドキドキ!」
「トキメキ!」
「「必殺っ、スウィート・ハリケーーーーンっ!」」
二人の手から、ピンクとスカイブルーの光が溢れ出し、竜巻となって、ダーク・ビーストを飲み込んでゆく。
光の奔流で、二人のバストもぷるるっと弾む。
「タツマーキー…」
優しい輝きに包まれた怪物は、虹色の爆散で、黒い塵となって消滅。
ダーク・ワッペンが無に帰して、湖の水も湖面へと戻った。
「「裸でずぶ濡れのスウィート・ハートが勝ったそぉ!」」
歓喜する、教師たちと生徒たち。
対して、アゲカラーは顔面蒼白だ。
「こ、これまで十二回も敗れ続けた私ですコケ…このままでは、総統様のお怒りで…!」
後が無い悪の幹部が、裸の二人の前に降り立つと、ダーク・ワッペンを二枚取り出し、側頭部へと張り付ける。
「この小娘どもがコケええっ!」
「アゲカラー!」
「ま、まさかまさか!?」
二人の悪い予感を具現化するように、アゲカラーの体が黒い稲妻に包まれて、六メートルにまで巨大化。
鶏肉のミートボールで作った雪だるまみたいな姿となったアゲカラーは、正義の裸少女たちへ、憎々し気な視線を向けた。
「この私がぁ、ここまで追い詰められてしまうとはコケェ…。もう許しませんコケェ…っ!」
怒りの瞳を炎の色で燃やし、巨体幹部がズシんっと足音を響かせる。
「アゲカラーめっ!」
「許さないのは、私たちこそです!」
「コケッケケケェっ! かかってきなさいぃ、だコケェっ!」
裸の二人がジャンプパンチで突撃するも、アゲカラーは頭の鶏冠を火のように燃やして、嘴から強烈な超音波を発射した。
「ゴゲゴッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
「「っきゃあぁっ!」」
すさまじい濁音の超音波を真正面から浴びて、二人はバランスが崩れ、裸の身体が大地へと落着。
「な、なんて音っ!」
「ひどい音痴、音痴ですうぅっ!」
二人は両手で耳を抑えるものの、悪の超音波は防げない。
穢れた音波で立っていることもままならず、ついには両肘をついて、お尻を掲げる四つん這い。
それでも、ビッグ・アゲカラーの超音波攻撃に苦しめられ続ける二人は、とうとう裸身を仰向けに、苦痛で悶絶させられ始めた。
「ううぅ…ち、超音波が…っ!」
「力が…力が入らない、です…っ!」
ずぶ濡れだった裸身が、超音波で苦しむ冷や汗で濡れて、月光でキラキラと艶めいている。
男子たちが見守る前で、裸の変身少女たちは、両耳を抑えながら苦しそうに、大地でのたうち回っていた。
スウィート・ハートを見守る男子たちも、超音波に苦しめられている。
「は、裸のスウィート・ハートが、超音波で苦しめられてるぞっ!」
「裸で苦しめられるスウィート・ハートが、大地で悶絶してピンチだっ!」
「地面で悶絶してる裸のスウィート・ハートをっ、応援するんだっ!」
聖少女であるスウィート・ハートよりも、普通の男子たちの方が、穢れた超音波による影響を受けづらいのだろう。
裸で悶絶する二人の少女たちが、同学年の男子たちに囲まれると、みんなの声援がかけられ始める。
「裸で悶えるスウィート・ハートっ、頑張れぇっ!」
「裸で悶えるスウィート・ハートっ、立ち上がってくれぇ!」
「裸で悶えるスウィート・ハートっ、俺たちが応援してるぞぉっ!」
取り囲む男子たちの熱い声援が盛り上がると、ビッグ・アゲカラーの超音波が、大幅に遮られる。
「ガ、ガキどもめえぇ…っ!」
同年男子たちの声援が光の粒となって、少女たちの裸身へと集まり、ティアラのジュエルが輝いてゆく。
「み、みんなの、応援で…!」
「力が、力が湧いてきます…!」
対する巨体幹部は、男子たちの応援の声に、表情を引きつらせていた。
「あのガキどものぉっ、なんという雑音ですコケぇっ! 人間どもの牡などぉ、声変わりしたらぁ、口を閉じさせてしまえばいいのですコケエェっ!」
更に強力な超音波を発するも、男子たちの声援を受けて力と勇気が湧き上がる裸の変身少女たちには、くじける理由など既にない。
スウィート・ハートが力強く立ち上がると、聖なる裸体が月光に輝く。
「シフォンシフォン、頭の横のワッペンを!」
「よし!」
二人が力強くジャンプをすると、再び真正面から突撃。
強烈な超音波を、高速前転する裸身で弾きながら、ビッグ・アゲカラーの顔面へ。飛び蹴りよりも近距離まで急接近する二人の裸腰が、左右に開脚されて、巨体幹部の眼前数センチへと、一瞬で迫る。
「「必殺っ、スウィート・側頭飛び膝蹴り!」」
思い切り開かれた変身少女の裸脚のヒザが、光り輝いて、ビッグ・アゲカラーの側頭部を左右から挟み撃ちにした。
–っズウゥンっ!
「ッゴゲエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!」
聖なる光で強蹴された側頭部のダーク・ワッペンが、虹色の光で浄化され、幹部もろとも爆散して消滅。
悪のワッペンが塵と化すと、湖畔には小さなヒヨコが残されていた。
「あらあら、アゲカラーはヒヨコだったのですね♡」
「ふふ…可愛いな、コイツ」
裸の二人が、手の上にヒヨコを救い上げる。
「やったぞ! 裸のスウィート・ハート!」
「勝ったぞぉっ! 裸のスウィート・ハート!」
「ありがとうっ、裸のスウィート・ハートっ!」
教師たちや、裸の女性教師たちや女子たち、更に同学年の男子たちの声援に応えて手を振ると、二人は虹色の光に包まれ、施設の玄関の方向へと消えていった。
翌日。
帰りのバスで、ナナとマリカがヒヨコを手に乗せ、女子たちが可愛がっている。
そんな女子たちの中でも、聖だけが悩んでいた。
「聖さん聖さん、どうかしました?」
「あ、うん…。せっかく、あんな近くで二人を見たのに、やっぱりスウィート・ハートの正体、わからなかったのよね」
「「そ、そう…あはは」」
笑ってごまかすしかない、ナナとマリカだった。
~つづく~
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