4-8
颯は本当はミイナについていきたかったが、名目的には探すということになっている以上効率を優先しなければいけない。
そしていくら体力にはまだ余裕があると言ってもこんな世界にはずっといられない。
颯は以前にここに来たことがないからあまり分からないが実際にこのインナーやトレーニングの効果は出ているのだろうか。
そんなに寒いと感じないので効果はあるのだと信じることにした。でも、ダウンジャケットのフードだけで覆われた顔面は感覚があまりなくなってきたようにも思う。
気になって、フードを外したい気持ちにもなるがこのブリザードの中でそんなことをしたら、雪の粒が石のような硬さで顔に当たるだろうということは容易に想像ができたのでやめておくことにした。
そんなことを考えながら氷の世界を歩いていく。目印もなく、こんな広い世界でたった二人を探すなんてとてもばかげた行為だと思う。もし山の中にいたら終わりだしもっと先の方かもしれない。もしそうなったらもう探しきれない。
インカムからミイナの声が聞こえる。
「颯君いったんバイクに戻って」
その指示に従ってまた颯はロープをたどってバイクへと戻る。バイクの前で少し待っていると、ミイナが遅れてやってきた。
「探す場所を変えましょ」
「どういう基準で探しているんですか?」
颯は先ほど思った疑問を口にする。
「基本的に今探したところは以前見たところね、念のためにと思ったけれどダメだったわ」
「次はどこに行くんですか?」
「少し東に行ったところね」
「根拠みたいなのはあるんですか?」
「ううん、あんまりないわ。一般的なルートはここらへんだというくらいかしら」
「そうですか、探しましょう」
「もし見つからなかったらどうしよう?」
しばらくバイクで走っていると不意にミイナの声が聞こえてきた。おそらくそれが初めて颯が聞いたミイナの弱音であったように思う。
「見つかりますよ」
なんていう気休めは言えない。
かわりに颯が言ったのは、
「見つからなかったらまた一緒に探しに行きましょう」
という言葉だった。
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