4-9

 ミイナは、

 「でももう姉さんをこの世界に置いておくわけには」

 と震える声で言ったが、ブリザードの中であったので、その声は颯には届くことなく流れて消えていった。

 

 バイクがまた突然止まる。ミイナが降りたのに続いて颯も降りる。

 「どうしたんですか?」

 颯が尋ねると、ミイナは興奮した様子で自分のネックレスを見せてきた。

 「今少し光ったの、夏にはこんなことはなかったわ」

 その言葉を聞いて、颯も少し希望が見えたような気がした。そんなオカルトみたいなことは普段なら信じないが今のこの状況ではそれを信じざるを得ないくらいの状況だったというのもある。

 「今さっきですか、じゃあここら辺ですかね?」

 「きっとそうよ! 姉さん今見つけるからね」

 そういうと、ミイナはあたりを歩き始めた。

 そして「姉さん、姉さん」と声をかけながら白の世界に溶け込んでいきそうになる。

 その得、颯は不意に不安感を覚えた。ミイナのもとに駆け寄る。

 「ミイナさん! 姉さんって誰のことですか? 姉さんはあなたのことでしょ」

 「姉さんは姉さんよ、見つけなきゃ、見つけなきゃ」

 颯はその言葉を聞いて姉さんというのが宝石を分けた、姉妹のことだと気付いた。

 見つけなきゃと何度も繰り返しながらもミイナの目はあまり焦点が定まってないように見えた。颯はこのままではまずいと感じた。

 「失礼します」

 颯は手袋を外し両手でミイナのフードの中に手を入れミイナの頬を挟んだ。

いつかミイナが颯にした行動だった。ミイナの頬は冷たかった。

「ひゃっ」

ミイナが短い声を上げた。少し正気に戻ったようだった。

颯はミイナの目を見て幼い子供に言い聞かせるようにゆっくりと一言一言をしっかりと話す。

 「ミイナさん、帰りましょう」

 ミイナをこのままここに置いていくわけにはいかない。一刻も早く戻らなければ。颯はそう考えた。

 それにしてもなぜミイナがこの段階でこのような症状が出てしまったのかが疑問に思った。

 ミイナよりはるかに鍛えていないはずの颯でさえまだ少しの余裕があるように思う。考えたくないことではあるが颯が足手まといになった可能性も否定はできない。

 颯は頭を振り、その考えを頭から追い出す。また考え始めてしまうところであった。

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