4-6

 「先輩だって去年一人で行ったんでしょ」

 「私は鍛えてるから。それに一人は何かあった時のために残っておいた方がいいわ」

 ミイナの言う通り、その方が一人は生き残ることができるだろう。

 だが、あの日思ったミイナを守るという目的を達成するためには自分一人でここで待つわけにはいかない。二人で生きて帰らないと意味がないのだ。

 「二人で探した方が早く終わりますよ」

 「だめ、危ないわ」

 「もう十分危ないんですよ」

 颯の語気がまた強まる。

 「ミイナさんに連れられて、何となく来たんだけど本当はもう帰りたい気持ちも強いんですよ」

 圧倒的な白の世界。この中で何かあっても見つけられることもないその恐怖が現実が徐々に颯を達成感から引き離していく。

 「じゃあ、帰ればいいじゃない」

 ミイナが付き離すすように言った。

 「置いて帰れるわけないじゃないですか!」

 ほとんど叫ぶように颯は言う。おそらくインカム越しでなくても聞こえたであろうぐらいの声量だった。

 「もういいわ、私は行くから」

 話を切り上げミイナはブリザードの中を進んで行く。

 颯はミイナがいった方とは反対側に進む。その方が効率が良いと考えたからである。早く見つけて早く帰ろう。

 壁の前でどうやって探したらいいのかもわからないのでとりあえず側面に沿って歩いていく。

 少し歩いただけなのにもう何人かに出会った。装備が新しいので探している人物ではないだろう。確実に現実が近づいてきている。

怖い。帰ってしまいたい。だが、守ると決めたではないかと気を入れなおす。

 そう言えば、先祖の特徴を聞くのを忘れたなと颯は思った。もっともあの空気の中ではとても聞ける雰囲気ではなかったし、聞いたところで素直に教えてくれたのかもわからないが。


 そんなことを考えながらさらに沿って歩いていると急にインカムから声が聞こえてきた。

 「颯君、今どこにいるの」

 「ミイナさんと反対側ですが」

 「もしよかったら来てくれない」

 申し訳なさそうな声でミイナは言う。

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