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ほら、とミイナが指さす方向には本当に壁が広がっていた。これがルイミ山だろう。近くで見るとその壁はどこまでも伸びているようでまるでこの星を二つに分断しているのかと錯角を覚えるくらいの迫力があった。ここを越えたと言われても正直信じられないと思った。これが颯の目指した新しい世界の始まりなのかと感じた。
「颯君どうですか、ルイミ山に来た感想は?」
笑顔で、手をマイクに見せかけてインタビューをするみたいに聞いてくる。
「すごいですね、遠くから見るのとは全然違って」
「そうでしょ」
そういえば、ミイナは以前の冬にも来たことがあるのだ。でもその時は見つけられなかった。そして夏も。颯の知る限りではミイナの挑戦はこれで三回目のはずだ。ミイナにとってはここからが本番なんだと思った。
「じゃあ、これつけて」
そう言って、ミイナがまた手渡してきたのは、巻き尺式になっているロープだった、その端っこの片方をバイクの後ろの部分に固定する。同時にベルトも手渡してきて颯にまくように促す。
颯はその指示に従いベルトを巻き、自分とバイクとをロープでつなぐ。その横ではミイナも同じようにしていた。
「じゃあ、颯君はここに残っておいて」
「え?」
自分も当たり前のようにミイナの祖先を探しに行くつもりだったので意外だった。それなら何故こんなロープまで付けさせたのだろう。
「いえ、僕も行きますよ」
「でも颯君は目的は達成したでしょ、もし私に何かあったら私の金具を外して帰ってくれていいから」
ミイナはそう言って、ブリザードの中を進もうとする。
颯はその手を掴んでミイナを止める。
「どうしたの」
「僕も行きますよ」
怖い。けど、颯はそう言った。
「いいって、ここからは本当に我ままだし、私の問題だから」
「巻き込んどいてそれはないんじゃないんですか」
颯の語気が自然と強まる。
「颯君も、ルイミに行きたかったんでしょ? 私も一緒に行ってほしかっただけだし、これでいいじゃない」
「だからミイナさんと一緒に行きますよ」
「だめよ、ここからは本当に危ないわ」
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