3-5
「そう言ってくれるならよかった、私だけじゃなくて他の人にも颯君が本当にルイミに行ける状態なのかを判断してもらいたかったの」
なんとか合格できたようで良かったと颯は思った。
でも、とミイナは続けて、
「颯君がそんなにルイミに対しての思いを高めていたなんて、正直意外だったな」
嬉しそうにミイナは言う。たしかに颯のルイミへの思いは確かに強くなっているが、それだけではない。実際、先ほど店の中で思った気持ちの方が強い。だが、それは今伝えることでもないだろう。帰ってきてから伝えたらよいことである。
また二人でバイクに乗って、いつもの公園に戻ってきた。バイクを置き、階段の前に二人は行く。
「少し走ろっか」
ミイナは伸びをした後、そう言うと、いつもと同じように走り始めた。
だが、今日は颯に合わせたようないつもの走りではなく、おそらく普段ミイナが自分でトレーニングをしているときのスピードであった。
当然颯のスピードでは追いつけない。だが、この一周だけはと思って、颯は足の筋肉に力をこめる。必死にミイナの背中を目指す。全速力に近いスピードで走ったおかげか、何とか半周くらいのところでミイナに追いついた。声をかける余裕などはないし、何よりもうあまり持ちそうにない。それでもトレーニングを始めた時よりは体力がついてきているような気がする。以前だったらこのスピードで走ることもできなかっただろう。だがここまでである。一周もたたないうちに再びミイナとの背中が開き始める。
ミイナはスピードを落とすことなく2周走り終えると颯が走り終えるのを待っていた。
颯が走り終えると、
「まだまだだな」
と、いつもの微笑みとともに冗談を言うような口調で話しかけてきた。
そう、まだまだである。たった1カ月足らずのトレーニングでそこまで早くなったら誰も苦労はしない。
「ええ、まだまだです、だから明日もお願いします」
本当はルイミ後も一緒にトレーニングをしたいが、それも帰ってきてから伝えればよいだろう。
「明日はごめん休み、というか明日から本番まで来れないから自主練でよろしく」
颯のいつも通りの言葉に対して、申し訳なさそうにミイナは返す。
「何かあるんですか?」
「うん最後の準備でね」
どんな準備なのか気にはなったがまた前みたいにはぐらかされそうだったのでやめた。
「そうですか、分かりました」
「うん、じゃあ本番でね」
ミイナもそれ以上は説明する気がないらしく、公園の入り口に向かいバイクにまたがり帰っていく。
その後、一週間ミイナの姿を見かけることはなかった。気になって、ミイナが自主練している時間に早起きをして行ってみたりもしたがミイナの姿はなかった。
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