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 その店の奥の方に40代と思わしき、この店の店主がいた。颯たちの姿を見つけると、にこやかに寄ってくる。

 「ミイナちゃん、久しぶり」

 どうやらミイナと店主は知りあいらしかった。

 「今日は何だい?」

 「ルイミに行くの、二人分お願い」

 「そっちの人は初めてだね」

 話を向けられて、颯は会釈を返す。

 「冬のルイミは厳しいよ、帰ってこれんかもしれん、それでも行く?」

 その声はどこか悲しそうな印象を颯に与える。

 「ええ、はい」

 ルイミに行きたいと思う今の颯の気持ちは確かなものだと思う。

 「これ、見な」

 そう言うと店主は店の奥の方に行き、写真を取り出してきて颯に見せる。ミイナくらいの年の男女十数人ほど移った写真だった。北大の門の前のようだった。前列の人が広げている旗には「第7期リミストシア北大考古研」と書かれている。

 「これが俺だ」

 そう言って店主が指さしたのは、端っこの方で旗に少し触れている眼鏡の青年だった。

 今とは全然感じが違う。本当に今の店主かと思うぐらいに全然違うので見間違いかと思ったが、指はもう写真から離れてしまったので確かめようもない。

 「この後、三人いなくなった、俺は臆病だったから生き残った」

 その言葉の後に続けて、

 「冬のルイミに行くとはこういうことだ」

 店の中が静寂に包まれる。ミイナは目をつぶってその話を聞いていた。

 文章やニュースなどで耳にすることはあっても、実際にそういう目にあった人から話を聞くのは初めてだった。

ルイミに登ったわけではなく、行くだけでもこのようなことが現実に起こりうる。

颯はこの時、本当の意味でルイミに行くかの覚悟を問われているのだと感じた。また、同時にミイナはこうなることが分かっていたのだと直感的に感じた。

 最初に沈黙を破ったのは、店主だった。

 「それでも行くかい?」

 その声音は優しくだけど寂しい感じがした。

 即答はできず颯は黙り込んでしまっている。

 ミイナも口を開くことなく颯の答えを待っているようだった。

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