2-10
「しか、は大げさでしょ」
ミイナが口を挟むがサンはそれには取り合わずに、
「でも、こちらとしても部員の興味がある分野にできるだけ協力していくのが伝統だから、今年の夏に船でルイミ山に行ったんだ」
実際に行ったのか、いい人だなと颯は思った。
「だから、次は冬に行こうって言ったじゃない」
「それに対して冬は危ないとも言ったよな」
先ほどの論争と似た流れになってきたと颯は感じた。
颯のその様子に気が付いたのか、サンはミイナの方に向いていた身体を戻して再び、颯に向き直った。
「颯君、ミイナとは意見が合わなくてね、それで考古研からミイナは抜けたんだ」
「そうだったんですね、それで部室を作ったんですか?」
「ああ、夏に帰ってきてからすぐここを占領し始めたんだ、そしてたまにこうやって我々の資料を盗んでいく」
サンの手元を見るといつの間にか何冊かの本があった。いつの間にとったのだろうか。
「盗ってない、同じ部活なんだから」
ミイナは反論しサンの手から書物を取り戻そうとするが、サンはそれをかわしながら、
「ではこれは返してもらう、後颯君もほどほどにな」
そう言い残し部屋を出ていった。
サンが出ていった後、沈黙が続いた。二人とも近くにあった長椅子に腰を掛ける。先にその沈黙を破ったのは颯だった。
「今の話、本当ですか?」
ミイナは、今までの明るい雰囲気とは反対に静かに頷くだけだった。
「何で、そんなに冬のルイミ山にこだわるんですか?」
「見つけに」
以前と同じ答えが返ってくる、颯はさらに踏み込んで聞いた。
「何をですか?」
「人を」
案外ミイナは素直に答えてくれた。颯はやっとミイナの目的が分かった。人を探したいからあんなに熱心だったのだ。行方不明になった友人でもいるのだろうか。颯はさらに聞いていくことにした。
「友人とかですか?」
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