2-11
ううん、とミイナは首を横に振り、颯が自分の話を待っていることに気をよくしたのか、いつもの調子を少し取り戻して話し始める。
「颯はさ、レヴィンから初めて人がやってきたのは100年前だって思っている?」
唐突にミイナはそんな問いかけをしてくる。
「違うんですか?」
図書室でよく読む歴史書も、学校の授業でも100年前と教わる。もしかして新しく違うという証拠でも出てきて変わったのだろうか。
「私はね、それよりもさらに100年ほど前にルイミの山をこえた人がいると考えているの」
「さらに100年ですか? 何か根拠みたいなのはあるんですか?」
「根拠はないわ、けどこれ」
ミイナは自分の首にかけてあったネックレスを外すと、颯の前に置いた。
以前は隠れていてよく見えなかったが先についているのは青い宝石であった。だがなぜか半分ほどかけている。
「これが何ですか?」
颯は思ったままを口にした。
「祖先がルイミ山を越える時に、姉妹で分けたお守りみたいなもの」
「ということはその200年前にルイミを超えたのかもしれないのって」
「そう、私の祖先よ」
「姉妹二人で挑戦したんですか」
「そんなわけないじゃない、そうすればもう超えているの確実じゃない」
ミイナはその死枚のどちらかの子孫であるからそれもそうである、少し考えれば分かることであった。
「一人はレヴィン王国をついで女王となったわ、行ったのはその姉と旦那」
ミイナはさらりと言ったが、颯は次々と明らかになる事実に驚き続けた。
つまりミイナは王国の血を引く人物だということである。おそらくこの部室にいられるのもその力が少しは働いているのではないかと颯は思った。
「その二人を見つけに私は拠点としてこの大学を選んだの」
ミイナはそれだけ本気だということであろう。颯が同じ立場だったとして、その理由のためだけに大学まで決めないだろう。
で、とミイナは話題をネックレスに戻す。
「このネックレスは、妹が去年の春に送ってくれたんだけど、これをしているとレヴィン山に挑戦した時の姉妹の様子を夢に見るの」
送ってくれたという部分で苦い表情になりながらミイナは言う。
ちなみにレヴィンからはルイミ山のことをレヴィン山という。
「夢ですか?」
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