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 バイクを取りに帰った日の翌日、学校が終わり、家に戻り着替えると颯はすぐに公園へと向かった。

先ほど学校から帰る時に見かけていたので分かってはいたが、ミイナは既に颯が いつも座っている場所に座っていた。

 ミイナは颯の姿に気が付くと、「颯君おっそーい」と、冗談めかして話しかけてきた。

 そういう冗談のようなノリが颯にはやはり分からないので「すいません」とつい真顔で返してしまう。

 ミイナは先日会った時と同じように薄い白のコートを羽織っていた。

 その中から濃い目の赤のセーターものぞいている。先日はろくにミイナの方を向けなかったが、今日は以前よりも余裕ができていた。

 でも、こうしていると胸の方ばかり見て話しているみたいになってしまう。なんとかして顔を上げなければいけないと颯は思った。だが、顔の方はまだ見ることができないらしかった。その整った顔立ちを少しでも見るとやはり恥ずかしさを覚えてしまうのである。

 そんな葛藤を颯がしていると、

「颯君、胸ばっか見ていない?」

 と、ミイナが少し警戒するような声音で颯に話しかけてきた。

 その言葉にどきっとして、慌てて目をそらす。芝生の緑色が目に入った。

 「もしかして、まだ緊張しているの?」

 再び冗談を言うような口調に戻りミイナは颯に話しかける。

 「はい」

 と、颯は小さく返事をする。

 「もう、年上だからってそんな緊張しなくていいのに」

 ミイナはそういうが、颯の緊張の原因はそれだけではない。むしろ緊張の原因の大部分はミイナの容姿が整っていることにある。そして今下の方を向きながら話をすることも封じられてしまった。

 どうしようかと颯が考えていると、

 「ほらこっち向いて」

 ミイナのその言葉と同時に手が颯の顔に伸びてきた。そして赤ん坊にするように両手の手のひらで颯の顔をはさむと無理やり、颯の顔を自分の方へと向けた。

 颯は一瞬何が起きたのかわからなかった。だが、すぐに顔全体が赤く熱くなっていくのが分かった。

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