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その後、今日は始業式があり、そこでもまた先ほど担任から聞いたような話を校長からも聞いた。違ったのはたとえ話の量の多さぐらいであった。その後は大掃除をして下校となった。
だが、受験生のために開かれている冬期講習に出席する生徒が多いためか、実際に下校するクラスメートは颯を含めまばらであった。
颯は、教室を出て昇降口へと向かう。一、二年も部活に所属している生徒が多いため、昇降口も生徒の姿はまばらであった。朝、空を覆っていた雲も、大掃除の間にどこかに流れたのか空は晴れに変わっていた。
日差しは強いが雲に覆われていないので暖かさはあまり感じられない。颯はゆるくまいていた首元のマフラーを少しきつめに寄せて靴を履き替えて出た。
帰りは公園を通って帰ろうと思った。
もしかしたら先ほどの女性ともう一度会えるかもしれないという淡い期待もあった。
公園を通る時に少し意識して、公園と池の境目の階段の方へと目をやった。
しかしそれらしき人物がいないどころか、誰も座ってはいなかった。
まあ、考えてみれば当たり前のことである。
いくら今日が始業式とHRのみと言っても朝見てから三時間近くは経っている。こんな普通の公園に三時間もの間はいないだろう。納得はしつつも少しは残念であった。
そのままそこに居続けるのも寒いし、耳が余計に痛くなるだけなので、再び家へと向かい始めた。家に帰ると誰もいなかった。
両親とも平日は仕事なのでこの時間帯は両親が休みでなければ颯一人になる。
冷凍庫から冷凍パスタを取り出し、袋を開けて電子レンジに入れる。その間に着替えた。
乾いた空気が家の中にまで入っているからか、家の中も寒く着替える途中は特にそれを感じた。
パスタはすぐ出来、それを持ってリビングに向かう。テレビをつけると天気予報をやっており今週いっぱいは快晴が続き寒さも続くのだと、天気予報士が言っていた。昨日の夜の雨はやはり珍しかったのだと颯は思った。
それを見ながらパスタを食べ終えると皿を流しに置き、颯は紺のダウンジャケットを着るとヘルメットをかぶり、バイクのキーを持って外に出た。
ヘルメットのおかげで今は耳が痛くないが、代わりに顔に当たる冷たい風が顎のあたりの感覚を徐々に失わせていく。
キーを一段階回してハンドルロックを解除する。バイクのハンドルをしっかりと握り、スタンドをあげる
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