第71話 AIに囲まれた世界~もしかして…

『あれじゃないですか?どっから、どうみても田舎者ですよねぇ?』

『あれだなぁ…すいません?』

『はぁ、はぁ、はぁい。どぉ、どぉしましたかぁ?時間ですか?』

『いえいえ、違いますよぉ。』

『私達も今来たばかりで、ビックリしてるんですよぉ。うだぁ、これからどうすんべぇって…二人で立ち往生しててねぇ…。』

『実は、私達、こういうものでして…』

『なぬぅ、なぬぅ、社会福祉士ですか…なるほどねぇ。』

『実は、東北の方からリュックサックを抱えて都内に出てきて、悪い人に絡まれそうになりそうだから…っと。』

『なるほどねぇ…。私達も新宿についてどないしようか…っと困っていまして…実は俳優になれたら嬉しッペと思ってあてもなく東京見物しながら芸能事務所に行ってみっぺっと、牛さぁ売って出てきたんだぁ。こやつは弟の義雄さぁ。そんでオラァが義一って…言います。』

『もしかして…あの有名な『カリオンズ』ですよねぇ?』

『なんだぁ…もしかして、青森の出身かい?』

『そうなんですよぉ。』


『えぇ?どういう事ですか…実はねぇ。この後、たまたま、夕方のニュースで取り上げられて、お笑い事務所にスカウトされてとある番組でヒッチハイクして有名になる二人なんだよぉ。』

『えぇ、そうなんですかぁ。』

『もしかして…とは思ったけど…。でも、ヒッチハイクから帰ってから精神を病んで弟さんは自殺するんだよぉ。お兄さんの方はドラッグにはまって逮捕されるんだけどなぁ…』

『ちょっと、それはまずいですよねぇ?』

『でもなぁ…未来を潰す訳にはいかないからなぁ。なら、忠告だけでもしましょうよぉ。絶対に死なないで、ドラッグに染まらないでぇ。有名になっても地道に生きてって…』

『そうだねぇ。その程度ならサポートしてはありかなぁ…それで、この二人の運命が変わるなら良いかなぁ…』


『いやぁ、ビックリたまげたよぉ。まさか、八戸市で有名な『カリオンズ』に逢えるとは、街の誇りですよぉ。おじいちゃん、おばあちゃんにも人気があってなおかつ、福祉にも興味があるんですよねぇ?有名になっても青森の誇りを忘れないで下さいよぉ。青森を裏切ってプレッシャーに負けて自殺したり、ドラッグや犯罪をしたら許さないぞぉ。』

『もちろんだよぉ。故郷に恩返しして、青森を有名にすっぺって…強い気持ちさぁ!おじいちゃん、おばあちゃんなど寂しい思いをして暮らしている人や障害があっても勇気や自信を持ってもらいたいって思っているよぉ。でも、有り難いなぁ。地元の応援団がいるって…うれしいなぁ。なぁ、義雄?』

『うだぁ。あんちゃん。』

『もう、二人とも泣かないで下さいよぉ。青森の誇りになるのは約束ですよぉ。絶対ですよぉ。あぁ、良かったら青森県会という芸能人が集まる場所に行ってみると良いかも…』

『あぁ、あったあった。こちらが名刺になります。以前、東京に出てきたばかりの演歌歌手とお会いしたので、青森県人で困っていたら助けると言っていましたよぉ。』

『有難うございます。何処に行けば良いか迷っていたので助かりました。』


『あぁ…しまった。未来を変えてしまったなぁ。』

『大丈夫ですよぉ。きっと素敵な演歌歌手になると思いますよぉ。二人組とは世界初になりますねぇ?』

『だと良いけど、芸能界は売れるまでに10年以上の下働きと厳しい世界で生き残るのは至難の業だからなぁ…』

『ですねぇ…。』


『あれぇ、すごい短いスカートと高いブーツを履いている人や長い靴下履いている高校生も多いんですねぇ?』

『あぁ、この時代はアムラーやルーズソックスが流行っていたなぁ…。誰もが同じファッションだけどなぁ…。たいていは売春目的だったり、ナンパ待ちだけどなぁ。』

『そうなんですか…その後はどうなるんですか?』

『まぁ、たいていは、それなりの大人にはなるけど…親に似てたいていはそれなりの子供になるけどなぁ。』

『そうなんですか…。少し残念な気がしますねぇ?』

『若い頃に苦労すればそれなりの大人になるけど…若い頃に楽したらたいていは不幸になるさぁ。とはいえ、食べていけるのは楽した人生を歩んだ人がいるからだけどなぁ…。』

『なんか切ないですねぇ…。』

『そうはいうけど…周囲に道を正す大人に巡り会えなかったとなれば話は別ではないかい?』

『確かに…なりたくてなった訳ではないからねぇ?ちょっと、声をかけてみるねぇ?』


『あのぅ、すいません…渋谷はどう行けば良いのですか?』

『渋谷?渋谷なら山手線に乗って代々木、原宿、渋谷ですよぉ。』

『有難うございます。助かりました。』

『いえいえ、どう致しまして…』

『あれぇ、外見では判断出来ないですねぇ?』

『そりゃそうさぁ。当時は、慶応や早稲田など有名な付属の高校生が実は髪の毛長くしたり、ルーズソックスなどを履いていたり、日サロで日焼けした人も多かったからねぇ?学校帰りにゲームセンターでピリクラ取ってカラオケに行っても根は真面目だから大学に入ったら真面目になるのさぁ。ちなみにさっきの女子高生は将来、アナウンサーになるのさぁ。』 

『えぇ!そう何ですか…不思議ですねぇ?』

『おっと、早速、ポケベルがなったなぁ。49106』

『何て書いてあります?』

『至急TELだなぁ。公衆電話を探さなきゃなぁ。あった。あった。職場に電話するから待っててなぁ。』


『あぁ、もしもし、はい、今日は無理でした。』

『そうなんだぁ。まぁ、慌てないで大丈夫よぉ。新しい案件があるから戻って来てねぇ?』

『はい、今から戻ります。ガチャ。』


『待たせたなぁ。』

『大丈夫でしたかぁ?怒ってないですか?仕事を取れないでぇ?』

『大丈夫だよぉ。営業やノルマがある仕事ではないから依頼は色々なところからくるからねぇ…』

『そうなんだぁ。』

『とはいえ、闇金から命を救う案件があるから戻ったら大変になるなぁ…』

『えぇ、大丈夫ですか?私達に危害はないですよねぇ?』

『どうかなぁ…案外、この時代の社会福祉士は辛い仕事だったかもなぁ…。それに、資格制度は1987年からだから認知度は低い上に収入も低かったから嫌がらせも多かったかもなぁ。介護保険制度や権利擁護や個人の尊厳などの知識もなかったからなぁ。』

『ですねぇ…』


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