第十三〜過去から戻ってきた?ここは…

第72話 AIに囲まれた世界~戻ってきた?

『ガチャ。ただいま、帰りました。』

『あれぇ、ここは?いつもの風景だぁ…もしかして戻ってきた?』 

『本当だぁ!戻って来たんだぁ!』 


『はい、はい、お帰りなさい。』って…なる訳ないでしょ?

『ここは?』

『地下にある核シェルターでしょ!』

『えぇ?さっきまで見ていたのは?』

『アンドロイドが1986年にタイムスリップした話の夢を見たに過ぎないのよぉ…』

『えぇ?どういう事だぁ…理解に苦しむなぁ。』

『だから、アンドロイドの身体を借りて外に出たわよねぇ?』

『そうだよぉ。外に出たと思ったさぁ。』

『違うのよぉ。アンドロイドの身体に入ったけど…見ていた風景はアンドロイドが見た夢の中よぉ。』

『えぇ?どういう事だぁ。という事は…まだ、地下にある核シェルターから出ていないのかぁ…』

『ところで、今は西暦何年ですか…?』

『聞いたら驚くけど聞きたい?あなた達二人はかなり寝ていたわぁ…今、残っているのはこの世界で私達を含め10人よぉ。まだ、7人は眠りから冷めないけど…』

『ちょっと、待ってよぉ。2389年だったでしょ?200人、核シェルターにいたでしょ?』

『確かに、100年以上前は200人いたわよぉ。』

『しかし…すでに、200年の間に次々に外に出て亡くなったよぉ。』

『えぇ?という事は今は西暦何年ですか?』

『今は西暦2589年になるよぉ。しかし、今は外には一歩も出れない…』

『どういう事ですか?』

『説明するよりも外の世界を見れば…何となく想像はできるわぁ。』

『えぇ、これは何処かの星の映像ですか?』

『違うわぁ…これは地球よぉ。』

『えぇ!どうして、どうして?どうしてなのぉ?1面砂漠しかないじゃないのぉ?』

『えぇ?どうなっているんだぁ。人類は何処にいるんですか?』 

『たぶん、探せばいるかも知れないけど、私の知る限り何処の国もこのような現状が続いているとだけは言えるわぁ…

あぁ、各地にユートピアとなる地域は存在するとはいいますが…私も同じような状況でして10年前に眠りから冷めたので外の情報はないのですよぉ。唯一あるのは莫大な古い資料だけですけど…それを見ると国境をなくす為の国を目指す共栄圏と国境を再び戻す為の中東連合が激しく戦闘を行ったみたいです。最終的には共栄圏が核を使用した事により、たくさんの犠牲者を出してしまい、砂漠になってしまったらしいわぁ。その後は核による放射能汚染により外への外出規制が出てしまい住まいを求めて地下に帝国を作るようになるが、そこでも醜い争いが起きてしまったらしいわぁ。』

『そうなんですか…この200年ですべてがなくなったのですねぇ?』

『そうとは限らないわぁ。時間を無限に作る事が可能になったわぁ。』

『えぇ?どういう事ですか?』

『簡単にいうと、死ぬ前に脳からデータを取り出せる技術が発展したのぉ。それを脳にデータを送れば他人が生きてきた経験をまるまる手に入れる事が出来るのよぉ。それにこの世界では1日が24時間でも脳にデータを送れば1日が5分、10分で2日、30分で6日、1時間で12日が経過する。10時間で120日、20時間で240日、つまり1日を他人のデータを入れたら288日過ごした事になるのぉ!すごいでしょ?』

『ちょっと待って。逆も可能という事も出来るって事にもならないかい?』 

『そうよぉ。もちろん逆も可能よぉ。1日を288日出来るわぁ。つまりは1日半で288日+144日で1年以上になるわぁ。という事は…3日で3年、30日で30年、300日で300年よぉ。』

『という事はアンドロイドの1986年の記憶は…』

『そうねぇ…200日の記憶って事になるわぁ。まぁ、たいていは充電されていたので2日や3日ぐらいにしか感じなかったとは思うけど…』

『そんなぁ…』

『しょうがないわよぉ。他人の身体を使用して外に出ようと考えが甘いのよぉ。それに、無事に生還出来たのは奇跡何だからねぇ?』

『えぇ?そうなんですか…。たいていは、途中でデータを抜き取られたり、違うデータを入れられてショック死になるわぁ。もしくは生還しても精神を病んで自殺するわぁ。』

『そうなんですか…知らなかったなぁ。』

『本来は刑務所がパンク寸前になったのと…死刑制度が廃止になったからなのよぉ。昔は懲役30日なんていうのもあったんだからねぇ?』

『えぇ?どういう事ですか…1日を288日という事は?』

『そうよぉ。10日で約10年、30日で約30年服役する事になるでしょ?』

『怖ぁ…そんな事が出来るのですか…浦島太郎は現実に可能になっていたんですねぇ?』

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